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第67話
和也は宗太を見ている。
それがどういうことなのかわかっている。
和也が自分のポジションを譲ってもいい相手なのかどうか見定めているのだ。
宗太が望む健人との関係は和也が思っているものとは違う。
けれど和也のポジションも欲しい。となると、慎重さが必要だ。
このクエストは案外難しいのかもしれない。
自分はさて置き、隣を歩く神戸は随分と大人しくなった。
どうやら和也に煩いバカは嫌いだと言われたらしい。
黙ったところでどうなるとも思えないが、それで和也の近くに居れるならと神戸は考えたようだ。
少し進むと美術館のような洋館、黒川邸から本人が姿を見せた。それを見て健人が大きく手を振る。
「黒川!ごめん、どうしても皆一緒に勉強したいって。急に人数増えて悪い!」
健人の姿を捉えた黒川はふんわりと微笑んだ。
あの健人に向けられた笑顔は本物なのだろうか。
同じクラスであるのに、黒川のあんな風に笑ったところなんて見たことがない。
「で、何で原田と神戸は手ぶらなんだよ」
「あ、ほんとだ。お前ら勉強しないなら帰れ帰れ」
「……」
「わーぉ。まじで俺ら手ぶらだな。ウケる」
勉強会という主旨をすっかり忘れていたことに気付いた宗太と神戸だった。
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