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第70話

ベッドを前に健人の体がふわっと浮いて、黒川に抱き上げられているとわかる。 意外にも黒川は力強く、健人を軽々と持ち上げベッドの上へそっと下ろした。 体に力が入らずベッドに横たわる健人は、この状況がどういうことなのか、パニックでよくわからなかったが、身に危険が迫っていることだけは感じていた。 今すぐここを逃げなくては。 そう思うのだが身体が言うことを効かない。 熱い身体を持て余して、胸を大きく上下させて呼吸する。 そのうちに、熱を放出したいとそっちの気持ちの方が逃げることよりも勝ってしまっていた。 「苦しいですか?」 「俺に、何か、したのか……?」 強がるように黒川を睨み付ける。 それを見て黒川が笑う。 「先輩の飲んだ紅茶に、いやらしい気分になるサプリメントを少々入れてみたんですけど、まさかこんなに効き目があるとは。それにしても可愛い胸ですね。服の上からでも乳首が硬くなってるのわかりますよ」 つうっと黒川の指先が衣服越しに健人の胸を滑る。 ぷくんと小さく盛り上がった胸の部分を、爪でかりっと引っ掻いた。 ピリッと痛みにも似た鋭い快感が身体を駆け巡る。 「や、だぁっ……」 「やだって言いながら、腰が揺れてますけ ど?」 黒川はくすくすと楽しそうに笑う。 健人は嘘だと思いたかった。 自分を兄弟のようだと慕ってくれた後輩が性的興奮を引き起こす薬を盛るなんて。 何の警戒もなく出された紅茶を飲んでしまった自分、宗太の言うことを信じなかった自分が悔やまれる。 今となれば健人のスマホも黒川が意図的に盗ったものだとわかる。 健人は黒川にまんまと嵌められたのだ。 健人の抵抗はあまりにも非力で、すぐに両手首を黒川の片手で一括りにされて、頭上に押さえつけられた。 立て続けに固くなった乳首を指で何度も擦られて、健人はびくびくと身体を揺らしながら鼻にかかる甘ったるい声で喘いだ。 「あ、ぁ……や、…やだっ……やだ ……」 「すごい……。先輩の声可愛くてそそられます。乳首弄られるの好きなんですね。ずっと服の上から擦りますか?それとも直接触って欲しいですか?」 健人は快楽の波に飲まれ、余計なことは何も考えられなかった。

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