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Lv.27原田宗太
「あれ、一人で行かせてやばくねぇ?」
神戸が呟き、宗太と和也は同時に踵を返した。
健人は一人駆け足で黒川の屋敷へ向かってしまった。
後を追わなくてはと、残された3人も走り出す。
急いで健人の後を追ったが、黒川邸を目の前にして門が開かない。
インターホンを押せど返事すら返ってこない。
宗太は何度もボタンを連打する。
悪戯する子供ですら、こんなに人の家のインターホンを鳴らしたりはしないだろう。
優に30回は押した。
「出ねーつもりか、くそっ」
ガンッとインターホンを拳で力任せに叩くと、グシャッとスピーカー部分が陥没した。
横にスライドする鋼鉄製の門は押しても叩いてもピクリとも動かない。だが、宗太は自分より高い門を見上げ、後ろからくる神戸と和也の足音を聞いてにやりと笑った。
「神戸、背中貸せ!」
「おいおい、何。まさか踏み台やれってのかよ」
「そこにいる和也先輩がちゃんと出来たら褒美くれるってよ!」
「は?……褒美?」
「早くしろ!開かねーんだよこの門が!インターホンも誰も出ねぇし。中で黒川と二人きりになってる可能性が高い」
いつになく宗太の焦る様子を見て、神戸も和也もただ事ではないとわかった。
「マジで褒美くれんの?並木先輩!」
和也が考える仕草を見せる。
健人に何かあった場合、ここでのチョイスミスは命取りだと危惧したに違いない。
「わかったよ。何欲しいのか知らないけど、ここは早く原田の踏み台になってくれ!」
「おっしゃーっ!じゃ、これ終わったらベロちゅーな!並木先輩!」
「べっ……べろ……べろ」
青ざめる和也を目の端に映して神戸が笑いながら門に向かって手を伸ばす。
神戸は少し屈んで宗太が門をよじ登れるよう背中を向けた。
「神戸、わりいな」
言いながら宗太は助走する。
切れのある走りで神戸の背中より少し離れたところで踏み切り、神戸の背中を駆けるようにして肩甲骨の辺りでもう一度踏み切って思いっきりジャンプした。
一歩、二歩と空中を駆け上がるように足で宙を掻き、ガンと鈍い音を立てながら門の一番高い所にしがみついた。
「よし」
神戸のがっちりした背中に感謝だ。
「気いつけろよ」
軽い身のこなしで門から飛び降りる宗太に神戸が声を掛ける。
宗太は「おう」と一言残して屋敷へ向かった。
先刻までいた使用人らしき人達の姿が見えない。しんとした静けさは先刻とは違う。
この変わりようは異様だ。
もちろん表玄関も閉ざされており、こうなると窓からでも侵入せざるを得ない。
ガラスを割った瞬間に防犯システムが作動しそうだなと辺りを見回す。。
するの裏口へと続く道を見つけた。
そこを進むと小さなバラの庭園があり、一人の中年男性がそこを手入れしていた。
恐らく使用人だ。
この人物は話せる奴なのか、それとも襲ってくるか。
宗太はどっちのパターンでも対応できるよう、頭の中でシュミレーションしながら話し掛けた。
「おい、中で俺のダチがあんたんとこのバカ息子に襲われてるかもしれねぇんだけど。……中に入れて欲しい」
その男は突然の宗太の登場に唖然とした表情を見せたが、すぐに何かを悟ったようだった。
「……またですか。だから私達にここを出て暇を潰せだなどと」
何かぶつぶつと呟いて、宗太に向き合う。
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