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Lv.28筑波健人

─苦しい……。 もういやだ!助けて……! こんなこと、したくないのに! 心と相反する身体の反応は止めることができず、昂ぶる熱の塊をしきりにシーツに擦り付ける。 後孔にも催淫剤的なクリームを塗られ、慣らされている間に受け口は柔らかくなり、更に慣らすためと言って玩具を挿入されてしまった。 難なくそれを受け入れた健人に黒川は嬉しそうな声を上げた。 黒川が何を言っていたのかぼんやりとした思考の中で理解することができなかった。 ぐねぐねと中で蠢く玩具が、時折ある一点を掠める。 その刺激が直接健人の性器に伝わり、先端からは透明な雫が止めどなく零れ落ちる。 「やぁ……っ、ぁっ……」 「先輩すごく可愛いです。本当に初めてですか?だったら素質ありますね。初めてなのにこんなに後ろで感じるなんて」 嫌でも視界に入るのは、興奮した黒川の厭らしい薄ら笑いが貼りついた顔と、浅ましい自分の身体。 まさか自分の体がこんな風に淫らに変化するなんて。 もういっそのこと気でも失ってしまいたい。 そして目覚めたら夢だった、なんてことになればいい。 「ん?……いいところなのに誰だろ。ちょっと待っててくださいね、先輩」 何かに気付いた様子で黒川がドアへ向かうが、健人に黒川の動きはもはや目に入っていない。 熱を外に出したい一心で、身体を捩る。 ─イきたい、イきたい……、直接触りたい……! 両手の自由が利かない状態で、もがきながら寝返りを打つ。 「はら、だ……」 その時、涙で滲んだ視界に宗太の姿を見つけた。 見たことのない宗太の憤りを目の当たりにし健人は息を飲む。 宗太は黒川を何度も殴りつけていた。 まるでサンドバッグでも殴っているかのように。 「はらだっ……ダメだ!そんな、おまえが、……そんなことしなくて、いいっ……!」 自分のせいで宗太が暴力を振るっているのだ。 慌てないはずがない。 ─俺のために、そんなことしないで……! しかし目の前で起きていることを止める力などあるはずもなく、健人は宗太を信じるしかなかった。 黒川が抵抗を止め、ぐったりとしたところで宗太は黒川の胸ぐらを掴みその体を投げ捨てる。 あんなに非情で鬼のような宗太を見たことがない。 宗太が健人をしっかりと見据えて、こっちへと向かってくるのがわかった。 「はらだ……」 宗太が助けに来てくれた。 その事実を認識しただけで胸が詰まる。 今まで必死に我慢していた涙がぽろぽろと溢れ出した。 泣きながらこんな姿を見られたくなくて身体をぎゅっと小さく丸める。 どんな顔をして宗太に会えばいいのか解らない。 コツコツと足音は近付き、健人の前で止まった。 「帰るぞ」 宗太はそう言って後ろ手に結ばれたカーディガンの袖をほどき、健人としっかり目を合わせた。 「散々だなあんた。動ける?」 「……」 赤い顔で首を横に振り、放出できない熱を持て余していると、宗太はすぐそれに気付いた。 「どうしてほしい?」 言える筈がない。 後ろに差し込まれた玩具を抜くどころか、それで中を掻き回して欲しい。 性器を思う存分擦りたいだなんて。 言えないけれど楽になりたい。 「たすけて、はらだ……」

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