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Lv.29原田宗太

抱き上げた身体は熱く、見た目通りの軽さで、愛おしさと悔しさと色々な感情が込み上げてくる。 外に出ると神戸と和也が待っていて、宗太の姿を見つけるとすぐに駆けてきた。 「お、おい、健人っ!大丈夫か!?」 宗太の腕で震える健人は目を開けて微かに頷いたが、またすぐに宗太の胸に顔を埋めた。 「何されたんだよっ?き、救急車呼ぶか!?」 目や唇が赤く火照っている様子は風邪でもひいて発熱しているように見えているのだろう。 和也が健人を見て取り乱す。 宗太はそんな和也を宥めるように落ち着いた口調で説明した。 「いや、救急車とかいらねーっすよ。この人俺の家行きたいって言うんでその辺でタクシー拾って連れて帰ります。んじゃ、神戸またな」 「おー……」 一方的に言ってその場を去る宗太の背中を二人は見詰める。 「何か盛られたか……?」 「盛られた?何を?」 「や、何でもないっすよ!原田に任せとけば平気っしょ。あいつ筑波先輩大好きだから嫌がることはしねぇと思います。それに俺だって……」 神戸は和也を熱っぽい視線で見詰める。 その視線に気付いた和也は走り出す準備を始めた。 「さ、帰ろうか神戸!もちろん別々にな!」 次の瞬間、和也は部活で鍛え上げた俊足を見せ付けるように猛ダッシュした。 「くっそはえーな。やべー」 もちろんうっとりした表情の神戸は置き去りにして。 駅へと続く大通りへ出るとすぐにタクシーを呼び止めて、宗太は自宅へと向かった。 腕の中の健人は相変わらず息が荒く、端から見れば病人そのものだ。 ─今の時間は誰もいねーよな。 ちらりと腕時計で時間を確認する。 健人の様子が普通じゃないだけに、家族に見られると厄介だ。 宗太の住むマンションに到着し、健人を抱えたまま部屋へ向かう。 健人は荒い息を繰り返し、眉を寄せて我慢しているのが伝わってくる。 母親と姉は買い物に行って不在だ。 夕飯は外で食べてくると言っていたから、まだしばらくは帰ってこない。 リビング脇の廊下沿いに宗太の部屋があり、すぐにそこへ直行した。 モノトーンで纏められた自分の部屋に健人がいて、変に高揚した気持ちになる。 健人をベッドに下ろしその横に浅く腰掛けると、健人が「うぅ」と小さく呻いた。 「身体治まるまでここにいろよ。布団の中入るか?」 健人は首を横に振る。 それを確認し何か飲み物でも取りに行こうと立ち上がると弱々しい手で服の裾を握られて足を止める。 「行くな……行かないで……」 再び泣き出しそうな表情で健人は宗太を見上げた。 「……っ」 自分に縋る健人が堪らなく愛おしく感じて宗太はベッドに乗り上げた。 もう確認なんてするまでもなく、健人が男だろうが何だろうが好きなんだと自覚して、そんな自分を求められたら断る理由なんてどこにもない。 健人の腕が宗太の首に絡まって、引き寄せられるように唇を重ねた。 「ん……ん……」 小さな唇を甘く喰んで軽く吸い、耳裏の髪の生え際から梳くように指を入れ、角度を変えてまた口づけする。 唇を放したタイミングで宗太は観念したように囁いた。 「先輩、好きだ。俺のもんになって欲しい」

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