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第78話

だけど健人がそれを知ったら自分もハランも避けられるような気がした。 ─止めておくか。 宗太は寸でのところで踏みとどまった。 宗太の何のゲームかという質問に健人はすんなりと「ロストワールド」と答えた。 「知ってる?って、知らないよな。原田みたいな奴がゲームしてるとこなんて想像出来ないしな。ロストワールドは他のプレイヤーと協力してバラバラになった世界を元に戻す。確かそんな大まかなストーリーがあった筈なんだけど、俺はあんまりまだ進んでなくて……」 宗太は時折相槌を打ちながら健人の話を聞く。 「面白いし楽しいんだけどゲームストーリーが進めば進む程、他のプレイヤーとの密な連携プレイが必要になって難易度が上がるから、あまりゲームをしたことのない自分には向いてないかなって思ってたんだけど……。でも最近仲のいい友達もできて。あ、そいつね、なんかスゴい奴なんだよ。欲しくてもなかなか手に入らないレアとかウルトラレアとか、果てはスーパーウルトラレアとか誰も持ってないような装備持ってて、レアモンスターを狩るギルドのリーダーで。でも全然そんなの鼻にもかけない感じで俺と遊んでくれるし、すごく優しくていい奴なんだ」 「へぇ……」 「なんかすごくクールって言うかカッコいいんだよね。モテそうな感じで……」 宗太の視線に気付き健人はハッと我に返る。 ゲームの話に夢中になって恥ずかしくなったのだろうか。 耳の縁がほんのり赤い。 「って、悪い!原田には関係ない話だよな!……つまんない話して悪い」 「や、別にいいよ。暇だし聞いてやるよ」 「おまっ……ほんと先輩に向かって失礼だよな。聞いてやるとか、その言い方」 「で、スルーして悪いけど、先輩はそのすげぇプレイヤーといつも遊んでるわけだ?」 宗太の発言に健人が口を尖らせるがその口元も愛くるしい。 「いつもじゃないよ。だって住む世界が違い過ぎるんだ。ちょっと近寄りがたい感じするし。そいつの周りのプレイヤーもスゴい奴らばっかりで俺なんかホントお呼びじゃない感じ。でも、話してみたらそいつも男子校の高校生でさ、ちょっとした俺の悩み事とかも聞いてくれるし、そいつと話してる時はイヤなこと忘れる」 「ふうん……そいつが黒川みたいに先輩に下心あって優しくしてたら?」 「え、それはないだろ」 ははっと健人は声を立てて笑った。 「第一ゲームだし、俺も男だってばらしてあるし。俺なんて貢ぐ価値もない駆け出しプレイヤーだしさ。原田、変な事言うね」 「そりゃ俺があんたに下心ありありだからだよ。ゲームの世界だろうが現実の世界だろうが、あんたがいるって解れば興奮するし構いたくなるだろ」 「ばっ、バカじゃねーの。ともかく、ハランはそんなヤツじゃない」 「……ハランっていうんだ」 信頼を寄せられて好意を持たれているのがはっきりとわかる。 宗太は健人を見詰め、優しく微笑んだ。

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