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Lv.31ハラン
─男子校の姫。
ついうっかり咄嗟に出してしまった言葉だったが、こんなことを言うつもりはなかった。
ケントのリアルを実は知っている自分を無意識にアピールしたかったのだろうか。
わからない。
ただ健人を知る者しか知りえない呼び名で呼んでしまったことは失敗したと即座に思った。
ケントは気にしないと答えたけれど戸惑いを隠せないように見えた。
もしここで自分の正体がばれてしまったら?
その時はその時だ。
男子校だからとか、男同士だからとか。そんなもの今の宗太には何の足枷にもならない。
今のハランは自分が宗太だということも含めて、ケントも健人も大好きだ。自分のものにしたい、大切な人。
「男子校で男同士だと何がダメなんだよ」
「何って色々……」
ケントが答えにくそうに口籠る。もしかして、そっち方面が気になっているのだろうか。
「ケントが気にしてることって、男同士どうやってヤルのか、とか?」
「ハラン、ちょっとはっきり言い過ぎ!もう少しオブラートに包んでだな……」
「誰も聞いちゃいねぇよ。それより否定しないんだな。じゃ、今ケントが気にしていることは、ソイツが好きだという前提があるからじゃね?好きでもない男とヤるっていう発想は好きでもない限り有り得ねぇと思うぞ』
***************
宗太は軽快にキーボードを叩く。口元は緩みっぱなしである。
『わかんない』
『何が?』
『好きなのかどうか』
自分の気持ちを認めたくないのだろうか?
十中八九、健人は宗太に落ちてきていると宗太自身自信があった。
何が健人の中でネックになっているのかよくわからない。
『……キスしたんだろ?』
『うん』
『イヤじゃなかったんだよな』
『うん』
『それだって男同士で出来ることじゃねーと思うけど』
『そうなんだけど……それだけじゃなくて』
『ん?』
『嫌だとは思わなかった。でも学校でどんな顔して会えばいいのかわからないし、そいつからの告白も恥ずかしくて思いっきり断っちゃったし』
「ふうん……」
自分からの告白を断った健人の心境がやっと わかった気がする。
男同士だという後ろめたさみたいなものと、気恥ずかしさ。
気持ちはこっちに確実に傾いているのに、健人の頭がそれは普通じゃないとストップをかけている状態だ。
『なんとなく……そいつはまだケントのこと好きだと思うけどな』
『でもどうしたらいいのかわかんないんだ(>。<)』
『混乱してるな。じゃあ試しに俺と、このlostworldの世界で付き合ってみる?』
『え?え?なんで』
画面の向こうでケントが慌てているのがわかった。
どうせなら、健人もケントも手に入れたい。
「思ってたより強欲だな、俺」
こんなに誰かに執着して拘って、手に入れたいなんて気持ちは初めてで。
付き合ってみる?だなんて、自分自身も困惑している。勢い任せにこんなことを言われれば、健人だって混乱するだろう。
『なんでって……。男と付き合うってことがどんなことか、少しはわかるんじゃねーかと思って』
『……でも現実とは全然違う』
『そーか?』
宗太は隣の人と肩を組むモーションコマンドを入力した。
すると隣同士で座るハランがケントの肩を抱くような体勢になる。
肩を抱かれた途端、ケントは慌てて立ち上がった。
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