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第85話
「あぁ。なるほど」
それを見て宗太がふっと笑う。
健人はその表情に吸い込まれるように宗太を見詰めた。
太陽の光にシルバーの髪がキラキラと透けるように輝いて、元々の端正な顔と相まって、本当に騎士のような王子のような、高貴な存在に思えてしまったのである。
胸がとくとく……と早鐘を打つ。
どうしてこんなにも、眩しく見えるのだろうか。
和也は宗太の首にそのメダルをそっと掛けた。
「えぇ、コホン。正式に、今日から筑波健人のナイトを任命します。っていうか、こいつ本当に危なっかしくてさ。どうか健人を見守ってやってください。宜しくお願いします」
そうかしこまって述べると、和也はストンと腰を下ろし何事も無かったかのように購買で買ったパンを漁り始めた。
─え、なんで?どうして急にそんなことを言うの?
急激に不安が襲い来る。
どうして和也は躊躇なく後輩に頭を下げるのか。
嫌な予感が急速に膨れ上がって、思わず横から抱き付いた。
「お、おいっ。やめろ健人!パンが潰れるっ」
「和也、和也っ。……なんで?俺から離れないよな?俺達友達だよな?」
「うわ、デレきた!お前その可愛い顔でおめめウルウルやめろよなっ!」
「だって何で急にそんなこと!俺のモテ期のあれこれを原田に一任しちゃうんだよ!」
「一任って言うか、俺の見えないところはソイツに任せたいっていうか。そもそ俺、彼女いるから休日まで色々お前に付き合ってられないし。まぁここではいつも通り変わらんけども俺一人じゃハッキリ言って力不足なところもあるし」
そこでやっと健人は理解した。
友達を辞めると言われた気になってしまっていたことが誤解だったことを。
何を思い返しても和也には助けてもらってばかりで。いつか自分から離れていくんじゃないかという不安があった。
しかし違うとわかって、ほっとした。
「びっくりさせんな!和也のバカアホ!どっか行っちゃうのかと思った……」
更にぎゅっと健人は和也にしがみつき、和也の首に顔を埋めた。
「……や、妬けるだろ」
和也はへらっと宗太に笑ってみせた。
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