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第87話

「あの時のあんたのことは俺しか見てない」 宗太が言うと健人は安心したのか大きく息を吐いた。 「良かった……。でも和也達が言ってたお見舞いっていうのは?」 「ぐったりしてるあんたを抱きかかえてるとこ見られてるから、体調が悪かったってことは知ってる」 「そうか。……てっきりあんな姿みんなに見られたかと思ったら軽くシねる」 「なぁ」 若干うなだれた健人の腕をぐいっと引っ張って宗太が抱き寄せた。 ふわっと健人の髪から香るシャンプーの清潔な香りが宗太の鼻をくすぐった。 「わぁっ、な、なに急に!?」 「俺だって心配してる。今も。あの後体調に変化はなかったのか?」 「うん。何ともない……」 「それにここも」 宗太は手を健人の尻に這わせた。 肌は滑らかでするんとした小さな子供みたいな尻だったなと形だけではなく感触まで思い出す。 腕の中に健人を収めた瞬間に、健人に欲情するなんて。 獣みたいだと突っぱねられるだろうか。 でも触りたい。それに黒川に悪戯された場所がどうなったのか確かめたい。 「あ、わ、なにっ」 「あいつらには見えてねぇから大人しくしてろ」 健人の身体が強張って宗太の腕をぎゅっと掴んだ。 「こんな小せぇとこに、あんなことされて傷付いたんじゃねぇ?痛かったろ?」 「……っ」 耳元で小さく囁く。宗太を見上げた健人の瞳が潤んでいた。 守ってやりたいと思う反面苛めて泣かせたいと思わせる健人の表情。 すぐにでも組み敷けそうな華奢な身体。男のくせに甘い仄かな香り。 健人の全身が宗太を誘惑する。 「俺ら先戻ってるなぁ」 「健人、テストだから遅れんなよ」 場の空気を読んだのか、給水棟の向こうから和也と神戸の声がして、二人が校舎の中に戻って行ったのがわかった。 「原田、俺何ともない……」 健人がふるふると顔を横に振る。 「ほんとに?」 心配半分、欲望半分、である。 「確認させろ」 「っは!?や、無理無理!」 単に傷になっていないか確認したいだけだと自分自身に言い聞かせ、イヤイヤと軽い抵抗を見せる健人を連れて給水棟のドアを開けた。 「ここなら誰からも見えねぇし。それに俺に見られんのなんて今更だろ。あんたのあんな場所が傷になってたらヤなんだよ。早くしねぇとテスト間に合わねぇな」 「……」 健人は絶句している。強引にもっともらしい言い訳を付けられて反論できなくなったのだろうか。 宗太は健人のベルトを手早く引き抜き、スラックスを下着ごと引っ張り下ろす。 白いキレイな下肢が窓から差し込む光で浮き上がる。 健人は自分のブレザーの裾をきゅっと掴んでじっとしていた。 宗太が健人の頼りない腰を引き寄せて双丘に手をかける。 「脚、開いて先輩」 健人は宗太に言われるまま、ゆっくりと脚を左右に開いた。 宗太は健人の腰を抱いたまま、そっと尻の狭間に指を滑らせ、後孔を探りあてた。 そこに這わせた指で入口をくにくにと揉むようにして押す。 「ぁ、ん……」 「痛くねぇ?」 「うん……痛く、ない」 自分のブレザーを握っていた健人の手がいつの間にか宗太のブレザーの胸元を縋るように掴み、頬を赤く染めて視線をさ迷わせている。 ─エロ……。やばい。 宗太は本能と理性をせめぎ合わせた。が、しかし。 あっさりと理性が根負けし、後孔をさすっていた中指をつぷりと少しだけ差し込んだ。 「あっ……、何でっ、指っ」 濡れてはいないが宗太の指はゆっくり奥へと飲み込まれていく。 中はきゅうっと絞られるように狭くて熱い。とてもあんな大人の玩具が入っていたとは思えない。

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