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Lv.35原田宗太
俺は猿か。と自問自答したくなる。
腕の中でそれはそれは可愛らしい痴態を見せた健人を思い出すと、下半身に熱がわだかまる。
はっきり拒絶されなければ先へ進んでいいんだろうと思ってしまうし、何より健人は快感に弱く流されやすい身体だと分析した。
そっちを先に繋げれば結果が後からついてくると思っている部分もあった。
けれどそんなんじゃなくて、身も心も、健人の全部が欲しい。
今までに経験したことのない感情をどうしたらいいのかわからずに持て余している。
宗太の中で、─健人を手に入れよ、という難解なクエストが発生していた。
テスト最終日。
短縮授業で昼過ぎには自宅へ戻っていた宗太は、取り敢えずlostworldにログインした。
どんな形でもいいから健人と繋がっていたいという乙女思考が信じられないが、もう抜け出せない程どっぷりと健人にもケントにも嵌まってしまったのである。
希少モンスターの狩りを主とするギルドwantedの活動は相変わらず続いていた。
獲得した戦利品の数々は倉庫にしまっておくのだが、最近はケントに似合いそうなものまで保管している。
言わば貢ぎ物だ。
こんなことまでして健人もケントも手に入れたいのだから、相当な熱のいれようだ。
そう自覚すると、自分自身にげんなりする。
そんながらじゃない。なかった筈だ。
しかし今度ケントに会えたその時はこの戦利品の数々をプレゼントしようと思っていたので、この短いようで長かったテスト明けを心待ちにしていたのである。
フレンドリストを開くと平日の昼間だというのに、wantedのメンバーがちらほらログインしているのがわかる。学生か、はたまた平日休みの社会人か。
正直ケント以外のプレイヤーのリアルには興味がないのでどうでもいいことだが、肝心のケントはまだきていない。
丁度昼時だ。先に飯でもすませるかと操作はそのままに椅子から立ち上がろうとすると、ミレーユからチャットメッセージが送られてきた。
『ハラン、お疲れ様(*^^*)』
『おつかれー』
『今日は早いねw』
『あぁまぁ。学校午前で終わりだったしな』
『ハランが学校行ってるとかリアルの話聞けて嬉しい(*^^*)』
『そうか?』
『うんwあたしハランのこともっと知りたいし』
「……あ、そ」
思わず冷めた口調で宗太が呟く。
ここ最近のミレーユはハランに纏わりついて離れようとしない。
もう時期クリスマスシーズンでゲーム内でのイベントがある。
パートナーを要する二人組で参加するカップル向けのイベントだ。
カップルとは言っても必ずしも男女のペアでなくてはならないということではないのだが、ミレーユはこのイベントにハランと参加したいと言う。
だから猛烈にアプローチしてくるのだ。
『で、何か用?』
『用って程でもないんだけど、ハランはクリスマスイベントの報酬どれにするの?』
『報酬って何だっけ。あんま興味ないから報酬が何なのか知らねんだよな。何もらえんの』
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