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Lv.37ハラン
恐らくケントは口説かれることに慣れていない。
今こうして自分が送った言葉にどう答えればいいのかケントは考えているのだろう。
返事がない。
健人もそうだ。
だがリアルでは健人の表情や仕草で大体わかる。
恥ずかしがりで強がりな小さい可愛い先輩を思い浮かべて固まってしまったケントを見詰める。
『大丈夫か』
しばらくして返事があった。
『うん。恥ずかしいからもうやめて(>_< )』
『んー。ケント可愛いから無理じゃね?』
『可愛くない(`ε´)ところでクリスマスイベントのこと知ってる?』
誰もが気になるこのクリスマスイベント。このイベントで取得できるアイテムは全て教会で結婚式の挙げられる結婚クエストに繋がっている。
結婚クエストに興味のないプレイヤーでさえもこのイベントに参加するのは、このクエストに関連するアイテムを高額で売ることが出来るからだ。
『もちろん。ケント、一緒にやろうぜ』
『うん!ところでこれって何するの?』
『それは……』
外界に現れるツリーのモンスターを退治してモンスターの落とす戦利品を集め、教会でイベントアイテムと交換するという単純なルールだった。
だがこのイベントで一つだけ特別なルール があった。
それは対人戦が行えるということだ。
つまりはプレイヤー同士が戦い、欲しいアイテムを奪いあえる。
ハランは概要をザッと説明するとケントが驚きの声を上げた。
『対人戦!?ガチンコ勝負ってこと(゚ロ゚屮)屮』
『ん。燃えるだろw』
『そうだな!戦利品も欲しいけど対人戦やってみたい!!』
『イヤでもやることになるな』
『すごい楽しみっ』
どうやらケントは結婚クエストには興味がないらしく戦利品を奪い合う対人戦に惹かれているようだった。
しかしハランはこのイベントに懸けている。
ケントに預けた砂漠のダイヤ。
それとこのイベントで獲得できる指輪の台座。
それらを錬金術のシステムで合成するとそれは結婚クエストで必要なウェディングリングになる。
ハランはそのリングを作りたかった。
結婚をするにしてもしないにしても、それをケントに渡して、もし受け取ってくれた時は─。
***************
「そうだ。ケント、これやるよ」
「なに?」
ハランは手に持っていた黒い布をケントに手渡した。
ケントはそれを広げてみる。
「え……マジックエイドパンツ?」
以前よりケントが欲しがっていたものだ。
ヒーラーならば喉から手が出るほど欲しいと言われる常時MPを回復し続ける装備品。
希少モンスターを狩れば獲得できるアイテムだが、弱いケントは狩りではなく競売にかけられたものを買って手に入れようとしていた。
レア装備は法外といってもいい程高値で売られているものが多く、はっきり言ってしまえばケントには手の届かない代物。
ハランはこれをケントにどうしても贈りたかった。
「い、いらない。こんな高価なもの」
ケントの言葉に面食らった。
まさかの「いらない」である。
これをゲットする為にドロップ率の低い希少モンスターを狩り続けた自分の苦労は一体……。
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