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第105話
どっと汗が吹き出そうな感覚に襲われる。 ジンはやはり知っているのではないかと。
ジンには自分が男子高校生だということを明かしてあるし、そんな自分がまた同じ男であるハランとゲームの世界で交際している…… なんて。
普通に考えたら、やはりおかしい。
何と返事をしていいのかキーボードを叩く手がぴたりと止まった。
すると、返事を待たずにジンが続ける。
『大体のことはハランから聞いてるし、誰にも言わないから大丈夫』
『あ……そうなんだ』
ジンからの柔らかい物腰をイメージさせる言葉に、少しだけほっとしたがそれについてどう思っているのか知りたいところでもある。
健人はチャットがどちらかというと得意ではない。
だから余計に言葉を選び間違えないよう慎重になってしまうのだが、誰とでも打ち解けられるような明るいジンが相手なので身構えなくても自然体で話せるような気がした。
『その……びっくりした?(>_<)』
『そうだなぁ、最初はね。だけどそう言えばハランは始めからケントに惹かれていたなぁとか思い出して納得したよ。それに僕も実は今好きな人がリアルに男の人だから偏見とかはないんだ。安心してね(^_-)』
『え、本当に?』
『うんw』
唖然とした。びっくりである。
まさかこんなにナチュラルにジンが自分にそういうことをカミングアウトするなんて。
健人は宗太に対する気持ちに本能的に蓋をして、出来ればそれを開けずにいたいと思っているが、ジンは正反対のようだ。
リアルを教えられたのだから自分も同じように返さなくてはいけないのかと考えてしまう。
でも……。
『一応ハランとは付き合ってることになってるけど、実はあまり実感がなくてさ。普通にゲームしてるのと同じ感覚だからちょっと戸惑ってる(^-^;』
本当はハランに囁かれた『好き』の言葉に健人自身の耳が感じたというリアルの事実だってある。
けれどとてもそんな事を暴露する度胸はなかった。
『はーwそっかwでもケント楽しいでしょハランといて』
『……うん。それはまあ』
正直それどころではなく、すごく、ものすごく楽しい。
色んな事を教えてもらって連れてってもらって。
冒険してる!lostworldやって良かった!と実感出来るほどにハランからは沢山の経験を与えてもらった。
『じゃあ、とりあえずそれでもいいじゃない?この世界、楽しいってことが大事だよ!ハランはケントのパートナーにするには最高の相手だと思うけどな』
『うん。そうだね』
ジンは応援してくれている。
『ありがとう、ジン(^o^)/』
『いやいや僕は何もwじゃそろそろ行きますか、アンダーグラウンド』
『うん、お願いします!』
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