110 / 138
Lv.42筑波健人
やっとアンダーグラウンドへ行けた。
ハランとジンにサポートしてもらいながら、未開の地を走り、どんどん強くなるモンスターの目を掻い潜りながら進んで行くのはとても興奮した。
興奮のあまりコントローラーを握りながら椅子から立ち上がったり、声を上げたりした。
冒険の始まりの地だと言われているだけあって、そこで初めて見る本編のストーリームービーも盛り沢山で見応えもばっちりだった。
ジンとの協力プレイで獲得したガラスの花も、黒魔法屋へ持っていき5000ベルと交換できた。
とても楽しい時間だった。
─それなのに。
健人は自宅から少し離れたとある駅へ向かうため電車に乗っていた。
ミレーユ主催のlostworldオフ会へ参加する為だ。
ミレーユと言えば、以前ミレーユの目の前でハランが健人を庇い、隣でノーガードだったミレーユが死亡するというハプニングがあった。
その後ミレーユからハランには近付くなというチャットメッセージをもらって以来、交流は全くない。
そんな相手からのオフ会の誘いはかなりいかがわしく感じたが、ケントを召集する理由がどうにもひっかかり、考えた末、仕方なく参加することにしたのである。
ミレーユはケントに、参加しなければハランを潰すと脅しをかけてきた。
潰すということは、今プレイしているサーバーから追い出してやるという意味だというのは健人でもわかった。
たかだかゲームでそこまで感情的になるなんて。
ケントのハランの恋人同士という関係を知っての上でちょっかいをかけてきているのだから、ミレーユが自分に嫉妬しているということもわかる。
だが、それも所詮はゲームの世界。
それを現実とまぜこぜにされ、正直健人からするとミレーユはかなりキワモノの類に値した。
拘わりたくないというのが本音だった。
しかし健人の正直で素直な性格が災いし、今までたくさん世話になったハ ランがミレーユから嫌がらせを受けているだろうという事は明確で、自分がオフ会に参加することでそれを止めてくれるのならばという期待から、参加を決めたのである。
あまり一人で遠出することはないが、幸いにも目的地は沿線一本乗り継ぎなしの場所だ。
何かあればすぐ帰ってくればいい。
ただ非常に気が重い。
会って何を話すのだろう。
ミレーユに会うのは怖い。
もちろん前日には和也についてきてもらおうとメールを送ってみたが、返事はNO。
メールする事すら気恥ずかしいと思っていた宗太にも聞いてみたが、予定が入っていると断られた。
必ず埋め合わせはすると返事を貰った時には胸の奥が甘く疼いたが。
とにもかくにも電車に揺られ、健人は一人行きたくもないオフ会へと向かっていた。
ともだちにシェアしよう!