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第118話
「あれ。君クロロでしょ。話し方ですぐにわかっちゃった。リアルでもミレーユの隣について歩いてるとは思わなかったからビックリしたよ」
クロロはどうやらハランのギルドメンバーであり、ミレーユの取り巻きらしい。
クロロと呼ばれた男は瞬間的に驚いた顔を見せ苦笑いを洩らし声のトーンを落とし た。
「すげーな。大当たり。俺はクロロ。ここだけの話、ミレーユが想像よりも美人で驚いてる」
「狙ってるの?応援するよ」
「え、まじで」
黒川がクロロににっこり微笑んでみせる。クロロはふっと笑ってハランへと視線を戻した。
「で、そっちの可愛いコちゃんが噂のケント?」
クロロの視線は宗太から健人へと移動する。
「可愛いだろ。俺のだから手ぇ出すなよ」
冗談とも本気ともつかないトーンで宗太は言う。
健人がちらりと宗太を仰ぎ見ると宗太は薄い唇にうっすらと凶悪そうな笑みを浮かべていた。
健人はその顔を知っている。
以前学園で襲われかけたときに助けてくれた宗太の顔だ。
喧嘩を楽しんでいる時の表情によく似ている。
宗太はこの異常な状況を楽しんでいる。
黒川はどうなのだろう。
2人がどうであれ、健人には怖い以外の何者でもない。
宗太のようにこの状況を楽しめるほど健人の肝は座っていない。
「へぇ」
健人は舐めるようなクロロの視線に居心地の悪さを感じ、ぐっと顎を引いた。
その瞬間背中にポンと手を当てられ黒川が囁く。
「先輩、いつもの強がりはどこいったの?」
「……っ」
黒川に心の内を見透かされ、健人の頬にかっと赤みがさした。
後輩に見破られた。それが恥ずかしい。
確かに今の自分は強がるしかない。
今までだって強がりとハッタリの学園生活だったじゃないか。
健人はそう自分に言い聞かせてゆっくりと顔を上げた。
「はじめまして。俺はケントです。噂になってるくらいなら知ってると思うけど、俺はハランの恋人です。よろしく」
そう言ってニッコリ笑ってみせる。
するとクロロは驚いたのか目を見開いて健人を見つめた。
言わずもがな健人は男子校の姫という異名を学園内に轟かせるほど、小造で繊細で可愛らしい顔立ちだ。
こちらから視線を合わせて笑いかければ大抵の人間が自分に見惚れることを知っていた。
健人がやっとこちらへ入り込んできたと宗太と黒川が健人を見て微笑む。
「わっ」
宗太が健人の肩をぐいっと抱き寄せた。
そして身体をそのまま固定され、宗太に唇を奪われる。
「ぅ……んっ」
冷たい空気に晒されていたお互いの唇は、次第に熱を孕む。
宗太は健人の唇を吸って、舐め、甘く食んだ。
「ん、は……ふっ」
反射的に宗太の腕から逃れようとして、はっと宗太の思惑が頭を過り、寸でのところで思い止まった。
ハランはミレーユに自分を見せたいのだ。ハランに対しては女よりも従順で可愛い男のケントを。
行き場を無くした手は宗太の袖をきゅっと握る。
健人は自分から宗太へ近付こうと足の爪先を伸ばし、ねだるように鼻先を宗太へ擦り寄せて宗太のキスを甘んじて受ける。
「ん……ん……」
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