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第119話

外野のことなど忘れてしまいそうに宗太が優しく唇を塞ぐものだから、鼻から零れる声も我慢出来ない。 もっと、と健人が強請るように赤い舌をちろりと出した時、はっと甘い息を吐いて宗太が唇を離した。 「続きは後でな」 そう言った宗太の視線はミレーユへ向かっていた。 健人も宗太の視線を追ってミレーユへ目を向ける。 そこには目を見開き口をポカンと開けたミレーユが棒立ちしていて思わず吹き出しそうになった。 「ちょっとー。僕らを置いて盛り上がり過ぎじゃない?ひどいよね、クロロ」 赤い顔した健人の横ですかさず黒川がフォローを入れる。 目の前で突然繰り広げられた光景に目を奪われたクロロは顔を赤くして立ち尽くしていた。 「あ……、マジかよ。男同士のキス初めて見た」 クロロの声は僅かに上擦っている。それを見て宗太が鼻でふっと笑った。 「なんだよ。羨ましいか」 「いや~。男はねーわって思ってたけど……でもまあケントならありかな」 「やんねぇよ」 「だから!有りか無しかっつったら有りだって言ったんだよ!……それよりミレーユ呼んでくるから待ってろ」 クロロがそう言ってミレーユの元へ戻って行った。何か少し話した後、ミレーユの集団が目の前へやってきた。 ミレーユは赤く艶めく唇で綺麗な弧を描き宗太に向かって微笑みかける。 「あなたがハラン?」 「あぁ」 「イメージ通りなのね。私はミレーユ。こっちの方々はwantedのメンバーよ。今日は来てくれて嬉しいわ。お店、この辺りに予約したの。たくさん話したいことがあるし、早速行きましょう」 ハランとケントのキスを目の当たりにしたミレーユは動揺しているのだろう。 こちらが喋る隙を与えない感じで一息に話終えると何の躊躇いもなく宗太の腕に自分の腕を絡ませた。 「っ……」 思わず健人は目を見開き、ミレーユの動きを凝視した。 ─いやだ。こいつは、俺のだ! 咄嗟に涌き出た感情は宗太に対する独占欲。 こんなところで自分の気持ちが露呈するなんて考えてもいなかった。 とにかくミレーユにはハランを渡せない。ハランも宗太も全部自分のものだ。 健人の手はミレーユの白いコートへと伸びていく。 「君噂のケント?手首細いなあ」 ミレーユに手を伸ばしかけたところで取り巻きの男達に囲まれ、一際大柄な男にその手を捕まれた。 「っ、な、なんですか!」 「ケントに触んないでよ」 黒川が不機嫌な声で男に告げる。 男は健人の手をぱっと放し態とらしく自分の手を広げて見せた。 「ああごめん。可愛いからつい。俺達はwantedのメンバーで……。まぁ自己紹介は店で追々な。取り敢えず俺達も向かおうや」 取り囲まれているうちにミレーユと宗太は先に公園を出てしまった。 後を追うようにwantedのメンバーと健人、黒川も公園を後にする。 隣を歩く黒川が健人にしか聞こえないように囁いた。 「これで許してもらおうなんて図々しいことは考えてません。けど、罪滅ぼしはするつもりです」 「え……?お前まさかまた無茶なことをするつもりじゃ……」

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