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Lv.45ハラン

ミレーユに腕を引かれて公園から歩いて5分ほどのところに目的の店があった。 5階建てのオフィスビルの地下にあるカフェレストラン。 18時を過ぎるとアルコールを提供するカフェバーに変わる。 クロロが受付で予約してあることを告げると店の奥へ案内された。 パーティションで仕切られたスペースの広いテーブル席だ。 「私とハランはこっち」 始めからそうするつもりだったのだろう。 ミレーユは宗太を連れて一番奥の上座へと移動し、隣同士で着席した。 後から入ってきた健人はミレーユの取り巻きに囲まれながら中央の席に座らされ、黒川はクロロが下座へ案内した。 これではミレーユにケントの魅力をアピール出来ない。 自分がどれほどまでにケントと健人のことが好きか、それを見せつけることも。 ミレーユには穏便に諦めてもらうことを考えていたのに、このままではミレーユを罵るような余計なことまで口走ってしまいそうだ。 運ばれてきたドリンクを目の前にしてクロロが口を開いた。 「えー。ではこれより、チームwantedのオフ会をはじめさせていただきます。本日の幹事クロロです。よろしくお願いします。早速ですが今回このオフ会を企画してくれた紅一点ミレーユさんに乾杯をお願いしたいと思います」 lostworldの時とは似ても似つかない社会人モードの口調でクロロが挨拶する。 いつもとは全く違うそのギャップに周りがどっと沸いた。 ざっと見た限りでは、学生は自分たち三人だけだ。 自分達が非力な子供だと思って甘く見ているのがわかる。 周りが盛り上がれば盛り上がるほどハランの頭はすっと冷めていった。 隣のミレーユもクスクスと楽しそうに口元に手を当て笑っている。 クロロに指名されたミレーユはすっと立ち上がりグラスを手にした。 「今日は皆さん集まってくれてありがとう。ここはlostworldだと思っていつも通りフランクにお話しましょう。もうすぐクリスマスイベントも始まることだし、その事についても語り合いたいわ。では、皆さんグラスをお手にどうぞ。……乾杯!」 「乾杯~!」 男達の声が仕切られた空間に響き渡る。 直後そこはlostworldにある酒場のように雰囲気が変化した。各国の町にある唯一の酒場だ。 そこには仕事を探す者、疲れを癒しにくる者、様々だ。 この場にいるオフ会参加者達もみなその冒険者であるように、lostworldの話題で盛り上がる。 この場を変化させたのはミレーユであり、ミレーユを取り巻く男たちがミレーユに少なくとも魅了されているのがわかった。 ─こんな女のどこがいいんだかな。 ハランはミレーユに視線を向ける。するとそれに気付いたミレーユもハランに目を遣ってにこりと微笑んだ。 「烏龍茶じゃ物足りない?」 「いや別に。俺未成年だしな」 「やだ。今、この場所はリアルではないのよ。ちょっとくらいハメを外しても誰も咎めないわ」 そうやって自分を引き込もうとしているのが手に取るようによくわかる。 「どうしてもって、あんたが勧めるなら飲んでやってもいいけど」 「あは。ハランってば、リアルの方が余程素直で可愛いわ」 ミレーユの細い指がハランの頬に触れて輪郭を辿る。 ハランはその手を取ってやんわりと離した。 「俺の恋人がヤキモチ妬くんで止めてくれ」 「恋人?……ああ、あの子ね」 ケントへ目を向けるとケントは男達に囲まれて何か話していたが、明らかにハランを睨んでいる。 ミレーユとの接触が面白くないのだろう。だがこちらとしては、嫉妬されてることも嬉しい。 睨み付けてる顔だって可愛らしくて愛しいと思う。 ─いけね……。 思わず口元が緩んでしまった。

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