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第122話
「綺麗だし可愛いわね。でも、あの子男の子でしょう」
「男だったら何?俺には女より可愛く見えるけど」
「確かにちょっといないわね。あんなに可愛い子は。……でもハランは女を抱くでしょ?」
ミレーユの手がテーブルの上に置かれたハランの手に重ねられミレーユはハランを誘惑する。
「まぁ。否定はしねぇけど」
今はケントと健人一筋だが、それまでは自分のタイプであれば取っ替え引っ替え入れ食い状態だったこともある。だから否定はしない。
けれど……。
「クリスマスイベント……私と過ごしてくれたら、私のこと好きにしてもいいのよ?」
上目遣いで露骨に誘われ、ハランはやっぱりそうかと確信した。
「へぇ。そうやってチームメンバーを分列させてたのかミレーユ」
「何のこと?」
とぼけたってわかる。ここにいる連中は現実を蔑ろにし、ゲームの世界に身を投じ、恋愛だって次元の違う世界で楽しんでいる奴らだ。
そこへ現実のキレイな女が現れて甘い言葉で誘惑されれば、誰しもがそっちへ落ちるだろう。
自分は捨て置き偏見の目でここに集まったメンバーを見ている宗太は、こいつらは間違いなくミレーユに落とされた奴らだと確信した。
そしてミレーユが自分を見る目。まるで獰猛な肉食女子の鏡のようだ。
lostworldからそのまま飛び出てきたようなハランそっくりの宗太を物欲しそうに見るミレーユ。
疎ましい以外の言葉が見当たらない。
「まあいい。とにかく俺はあんたに興味は湧かないし、クリスマスイベントはケントと、だ。気持ちは変わんねぇから諦めろ」
「なっ……」
ミレーユの顔が一瞬にして歪み、動揺が走る。
今まではっきりと拒絶されたことがないのだろうか。まさか私が、そんなのあり得ない、と顔に書かれているようだった。
「まさか、こんな事を俺に言うためにこんな場所へ呼んだのか?だとしたら、あんた相当頭イカれてるぜ」
ここが、とハランは自分の頭を指差した。
「……っ」
途端、ミレーユの顔がさっと赤くなる。年下の子供に頭がおかしいと言われて何も感じないはずがない。
「俺とケントはリアルでも繋がってるって知ってた?……って、知らねぇよな。知ってたらケントまで呼び出すはずねぇよな」
「え……?」
「あんた見ただろ?俺とケントが公園でキスしてるとこ」
「……」
「俺とケントはリアルでも付き合ってる。そういうことだ」
ミレーユの入る隙などこれっぽっちもない。そうはっきりと意思表示したつもりだった。
ミレーユは俯き唇を噛む。余程悔しいのだろう。
だがそれだけで引き下がるミレーユではなかった。
ミレーユは突然宗太のシャツの襟元を握り、ぐっと自分の方へと引き寄せると艶めく赤い唇をぶつけるようにハランに重ねた。
「っ……!」
唇を重ねたまま、ミニのフレアースカートから覗く形のよい脚でハランの膝を跨ぎ上へ乗り上げ、一旦唇を離すとぴったりと身体のラインが浮き出るニットで胸をハランの頬に押し当てる。
ミレーユは明らかに健人を意識し、宗太を挑発している。
力で拒否するのは簡単だが、健人がどう出るのかも宗太は気になりこれといった抵抗もせずに健人へ目を向けた。
こんな時に不謹慎だとは思ったが自分が健人に愛されているのか確認したかった。
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