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Lv.46ケント

「本当にハランと付き合ってるの?」 「ていうか、君ほんとに男の子?」 「さっきハランとキスしてたよね?リアルでも付き合ってるの?」 ギルドメンバーに囲まれ矢継ぎ早に質問される。 どうすることがベストなのか健人の思考はそこまで及ばなかったが、ここで関係をこじらせれば必ずlostworldに居辛くなるだろう。 キングと称されるまで、ハランは自分より、ここにいる誰よりも時間を費やし上り詰めたに違いない。 そんなハランの居場所が無くなるなんてと考えると、キリキリと胸が痛む。 そこが健人のケントとしての感情だった。 リアルではめちゃくちゃだけど自分を守ってくれて。 年下だけどそれを感じさせない包容力があって。 そしてハランもまたケントを慕い、好きだと言ってくれる。 どこにおいても直球で感情をぶつけてくるハランに心が揺れない筈がない。 だから健人はケントとして、上手く立ち回らなければいけないと思った。 健人はにこりと微笑み、一人一人の目を見て返事をする。 「そう。俺、ハランと付き合ってるんだ。ハランすごくカッコ良くて、ケンカも強いし……大好きなんだ」 少し恥ずかしそうにはにかむと、ケントの周りがほうっと息を吐いて健人に魅了される。 「本当に男……だよな?いや見た目はもちろん男子に見えるけど、なんかちょっとこう……触っていい?」 顔を赤らめて目の前の奴が言う。 この厭らしい顔は見たことがある。 健人はこの手の経験が多々あった。 ─そう、これはちょっとしたセクハラだ。 リアルならば、冗談じゃないと抗うところだが、今は状況が違う。 ここはlostworldの中だと自分に言い聞かせる。 「いいよ。どこ触る?胸がないか確認でもする?」 上目遣いで見上げて言うと、男はこくりと頷いて太い腕を健人へ向ける。 健人は内心くそったれと暴言を吐きながらそいつの手をやんわりと掴んで自分の胸に移動させた。 手が、健人の胸を撫でる。 すると二度、三度、その手は勝手に往復し始め、しつこくされているうちに胸の突起がぷくりと膨らんで、それに気付いた男はわざとそこに指を引っ掻けた。 「確かにおっぱいはないけど……」 鼻息が荒い。 少しやり過ぎただろうか。 「ちょっともう、おしまいっ!俺に胸なんかないのわかっただろ!」 狼狽えながら男の手をどかして、自分の手で胸を隠す仕草をすると周囲がどよめいた。 男である健人にそこにいる全員が見惚れていた。 その後も、ケントに対する質疑応答が続き、笑顔で受け答えしているうちに、メンバーとケントの心理的な距離が少しずつ縮んでいくのが感じ取れた。 しかし一番の気掛かりは、やはり宗太とミレーユである。 時折宗太を確認しながら嫉妬の眼差しを向けてはいたが、またちらりと目を宗太へ向けると、ミレーユが宗太の膝へ乗り上げている。 そしてそのままキスでもするかのように、ミレーユは宗太の顎を掬って顔を近付ける。 どくんとケントの心臓が大きく音をたてた。 ─だめ……!いやだ……!! 咄嗟の出来事に健人も衝動的に立ち上がった。 ガタンと椅子が音を立てた。

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