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第125話

「やめろっ!どけっ!ハランは俺のだっっ!!」 腹の底から声が出た。 中性的な声であるにしても、怒気を孕んだ声は迫力がある。 猫を被ってケントを演技していたが、これですっかり剥がれ落ちてしまった。 ミレーユの動きが止まる。 ミレーユは宗太に乗り上げたまま言った。 「いいの?ケント。クリスマスイベント成功させたいんでしょ?ここで私に歯向かうと、ここにいるメンバー全員を敵に回すことになる。クリスマスイベントはおろか、日常的なゲーム内のルーチンワークさえ楽しめなくなるかも」 「やめろよミレーユ」 溜め息を吐きながら宗太が言った。 宗太の唇にはミレーユの赤い口紅の跡が残っている。 ─キスしたのか……? 宗太がミレーユに呆れているのはわかる。けれどミレーユに唇を許し、健人が声を荒げても宗太は動かない。 なんで!? ミレーユを拒絶して欲しい。 今すぐ立ち上がって、自分を抱き締めて欲しいのに……! ミレーユに対する怒りと宗太への思いが色々と入り交じって健人は怒りでかあっと身体を熱くした。 「っざけんな……!」 健人は周囲を押し退けてミレーユとハランの元へと向かう。 健人はミレーユを見据えて言った。 「ハランは俺のだ!お前なんかに渡さない!……クリスマスイベントが何だっていうんだよ!!そんなもんやらなくたって……俺は、ハランが、原田宗太が、大好きでっ……この気持ちは絶対に誰にも負けないっ!」 後先考えずに心のままケントは声を上げた。 「健人……先輩……」 驚きのあまり目を見開き、素に戻ってしまった宗太に健人は続ける。 もう自分自身を誤魔化すことなんて出来ない。 「原田ごめんな。俺、お前のこともうとっくに好きになってたのに、いつもごまかして。肝心なことを伝えてなかった。俺、お前のこと好きだ。……お前が辛い思いするなら、ゲームなんかやめたっていい。クリスマスはゲームイベントなんかじゃなくて、リアルで一緒に過ごしたい」 「っ……」 健人をじっと見詰めていた宗太が息を吐き出すように笑って目頭を押さえた。 「なんなのよ……!」 ミレーユがハランの膝からすっと降りる。 そして、キッと健人を睨み付けた。 「……私とんだ当て馬じゃない。冗談じゃないわ。あなた達、イベント成功させようなんて思わないでよね。絶対に阻止してみせるから。イベントアイテムは何一つとらせない」 イライラした様子を隠せないミレーユにクロロが近付く。 終始黙ってみていた参謀役クロロがミレーユの耳元で何かを囁いたのだ。 ミレーユの顔色がみるみるうちに青くなり、仕舞いには腰が抜けたかのように椅子に沈んだ。 それを見たクロロは小さく溜め息を吐き、ケントとハランへ向き直す。

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