112 / 165

第113話

side馨 いじらしいと思った。 どんな姿も俺を魅了する魔性な彼にくらくらする。 二人の雄に貫かれて喘ぐ妖艶な玲さん、快楽に従順なかわいらしい玲さん、俺のものを懸命にしゃぶる健気な玲さん…どんな姿だって俺を夢中にさせる。 それが玲さんの本性ならば、玲さんがそれを望んでるなら、なんて言い訳をして彼を抱く権利を手に入れた。そして、玲さんを手に入れるためならば自分も同じ場所に堕ちてもいいなんて覚悟もしていた。 でも、涙を流す玲さんを見て気付いた。やっぱり玲さんは僕の知っている玲さんでもあるのだと。 玲さんが本当に望んでいるものは今の姿ではないだろう。過去はどうあれ、玲さんは今いる場所から出るべきだ。日の当たる場所に、できれば、いや、俺が玲さんをとらわれているものから救い出したい…! 玲さんの俺への気持ちは嘘では無いと信じてます。だから、どうか玲さんも俺を信じて―― そんな思いを込めて玲さんに唇を寄せた。どちらからともなく、引き寄せられるように口づけた。 口づけは、お互いの存在を確かめ合うようにゆっくりとしたものだった。情欲を呼び起こすような激しいものではない。熱が、吐息が、お互いの言葉を越えた感情を伝播していく。 離れるタイミングも同じだった。 名残惜しそうに俺を見る玲さん。無意識なのだろうが唾液で濡れて光る唇と、涙の痕が残る瞳はかなりの破壊力だ。 「っ…、玲さん」 「ん…?」 呆けたように俺を見上げる玲さんに、俺は必死に自分の衝動を抑えながら言う。 「…いれても、いい、ですか?」 色々と決意をしておきながら俺はまったく余裕が無い。そんな自分にあきれながら、しかしその言葉に喉をならす玲さんを見てまあいいかな、なんて思ってしまう。 「まったく、あなたは困った人です」 「ぇ…?って、ぅわ…っ」 未来はどうあれ今の瞬間玲さんと繋がれることが幸せでならない。

ともだちにシェアしよう!