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第129話
南雲さんが離れてもすぐには動くことができなかった。
視線だけが彼を追い続ける。
南雲さんは衣服を整えながら、少し離れた場所にある恐らく彼の荷物に向かっていく。そして、その中から何かを引っ張り出すと俺に向かって投げて寄越した。
「ぅわっ…」
急なことで反応が遅れた俺はそれを取り損ねてしまう。
地面に落ちたのはどうやら布のようで、俺は玲さんを落とさないようにしながらそれに手を伸ばす。
それは大きめのタオルだった。
拾っている間に再び近づいてきた南雲さんの手にはまた別の物がある。俺は自分が為すべきことがすぐに分かった。
俺は玲さんをタオルで包むようにしながら身体を拭き始める。用途を聞かなかったがそれで正解だったようで、南雲さんは何も言わずにジャージ類をカウンターに置いてまた荷物の方へと戻っていく。
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