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第132話

逃げ出す……具体的にはどうやって?日常の中でも会わなければならない仕事の相手でもある彼からはビジネス相手としてのプレッシャーもかかるはず。 「 玲、あの二人の事、私生活をどのくらい知ってる?」 「 え?それはどういう事?」 「 彼らの家族は?二人とも独身?結婚はしているの?」 そうだ、僕は彼らの社会的な立場を全く知らない。せいぜい勤め先を把握しているくらい。どこに住んでいるのかも、家族はいるのかも何も知らないことに気づいた。 いつも彼らと会うのはあの店か指定されたホテル。 彼らに造られた囚われた夜の逢瀬ばかりだ。 「 馨君、僕は何も知らないよ 」 「 まず、敵を知ることが勝つための条件だよ。そして、俺のことは呼び捨てにして、これからは馨って 」 「 か、馨……」 小さく発したその言葉は吐息と共に奪われた。 優しく抱きしめる逞しい身体は僕の心に勇気と未来を見せてくれる。 悪夢じゃない夢。 好きな男と共に見る夢。

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