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第34話

「新谷君、今どこにいる?」 という問いかけに、 「…………」 無言でいるのか、それとも単に彼の声が聞こえない、聞き取れないだけなのか。 胸のあたりが妙にざわざわする。 「……さん、帷さん?ここからあなたの背中が見えますよ」 振り返ると、書類とUSBメモリのケースを手にした新谷君が目に入った。 「今日の打ち合わせの件で加藤さんに確認の電話をしていました。それと、必要書類のコピーも用意できたので、不足はないか一度見て頂けると助かります」 口元を少しだけ上げた柔らかな表情に、さっきまでざわついていた胸の中が穏やかに凪いでゆくのがわかる。 あくまでも仕事を円滑に進めるための配慮であり、誰の指図がなくともそれをやってのける優秀な人材であり、後輩。 それはわかっている。 けれど。 新谷君、きみがいてくれることにホッとする自分がここにいるんだよ。

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