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第38話
「ああ!こんにちは!お待ちしておりました!」
聞き覚えのあるその声に、自然と身体がびくりと反応を見せてしまう。
「今、ちょうどお迎えに上がろうと思っていた所でして」
エレベーター内の光景を特に気にした風もなく、その人物は言葉を続ける。
「ご足労おかけしてすみません。新谷と、こちら帷と申します」
俺を支えたまま、新谷君が"彼"に挨拶をする。
顔をあげなくては。
平常心を保たなくては。
そう思うのに、身体は言うことを聞いてはくれない。
思わず、新谷君の腕をぎゅっと掴んでしまう。
「到着して早々、大変申し訳ないのですが」
新谷君の声が上から聞こえてくる。
「帷が体調が悪いようでして……休ませたいのですが、どこか場所をお借りできますか?」
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