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第59話

そんな僕の様子を見てふ、と笑みを溢した南雲さんは大きな、先ほどまでとは違う爽やかな声で「新谷君!」と彼を呼ぶ。 こちらに気付いた彼が「帷さん!!」と駆けよってくる。 「……うまく誤魔化せよ?待ち合わせ場所は後で連絡する」 耳元で僕に囁き、新谷君へにっこりと笑みを向けるも、彼はキッと南雲さんを睨む。 「……帷がご迷惑をおかけしました。打ち合わせも済みましたのでこのまま帰らせていただきます」 ぐい、と南雲さんに後ろから腰を支えられていた僕の腕を彼が掴む。 「おや?何か勘違いをしているようだけれど」 「はい?」 「帷とは古くからの付き合いでね、休めば治るというから、休憩室で昔話がてら話を聞いていただけだよ。なあ帷?」 「そうなんですか?」 心配そうに僕の目を見つめてくる彼。 新谷君からは見えない、スーツに隠れされた位置の南雲さんの手が、妖しく蠢いた。

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