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第60話

俯いたまま、新谷君の問いに頷くと、南雲さんの手はやっと僕の腰回りから離れていった。新谷君は何故だかやや悔しそうに抑えた声で、 「 それでは、これで失礼します 」 と僕のビジネスバックを南雲さんから受け取った。 駅に向かう道すがら、社に戻る前にと僕に今日の打ち合わせの流れを簡単に説明してくれるころには、すっかりいつもの新谷君の快活な口調に戻っていた。 かえってそのことに僕はとても恥ずかしくなった。 仕事もしないで南雲さんとあの部屋でなにをしていたのか…… 新谷君には過去のことも何もかも南雲さんとのことは絶対に知られたくなかった。

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