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第61話

それから会社に戻り、何事も無かったかのように業務をこなした。 余計なことは考えたくなかったし、そうしていないと何かに引きずられる気がした。 報告書を作成し終えて、僕は向かいの席を見遣る。 新谷君は今はいない。 少し前に彼のスマホに着信があって席を離れたのだ。 忙しいのだろう。なかなか戻ってこない。 今日なんて予定になかった急な仕事で、しかも本来は僕のサポートをしてくれるはずだったのを一人で対応することになって。 倒れそうになった僕を支えてくれて、そして―――― 考えにふけっていた僕はスマホの着信で意識を取り戻した。 (――…南雲、さん…) ディスプレイに表示された名前を見て、一瞬その相手が別の人物であることを期待していた自分に気づいて嫌になった。 新谷君は僕の後輩だ。頼りになる後輩。その、はずだ。

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