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第10話全てを洗い流して
アランside
僕が目を覚ました時には
楓は隣で熟睡していた。
中にあるはずの白濁は無い。
「…………綺麗にしてくれたの?」
僕はスヤスヤと寝息を立てる
楓を見つめ呟いた。
既に東の空は薄ら
明かりを灯している。
散々抱かれた身体は
重たい鉛を付けているような
そんな感覚。
僕は無理矢理身体を起こし
そっと風呂場へ移動して
頭からシャワーを浴び
鏡に映る目の前の自分の姿に
涙が零れた。
あちこちに残る証。
愛されて抱かれた感覚が
はっきりの僕の中に残っていた。
それが尚更虚しい────。
もしあの人じゃなくて、
楓を愛せていたなら……。
きっと僕は幸せだった。
それを知ってしまった。
初めて楓に逢った時、
楓は真っ赤になりながら
僕に手を差し出した。
あーあ、この人は……楓が
僕に恋をした。
それがはっきり伝わってしまったから。
何故なら────、
僕があの人に一目で恋した
瞬間と同じ!
そう僕と同じ表情と
瞳で僕を見たから。
でも────、
僕の気持ちはもう手遅れ。
自分でも止められない。
どうしようもないんだ。
僕はシャワーを強めにして、
その場に泣き崩れた。
どれくらい────。
分からないけど、
僕が身体を綺麗にして
1番お気に入りの服に
袖を通し、静かに部屋を
去った時には、
もう朝の光が登っていた。
季節は初夏────。
僕は再び屋上へと
脚を伸ばした。
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