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第11話最後の願い
屋上に出ると朝の光が
僕を照らす。
僕はゆっくりゆっくり
歩いていく。
あの人は今頃、
寝ているのだろうか。
あの美しい女性の隣で……。
あの人は、
僕に1度も微笑む事は
無かった────。
だけど、きっとあの女性の
前では優しく微笑むのだろう。
僕は最低だ────。
散々楓に抱かれておきながら、
僕の心はあの人の事ばかり。
まだ体に感触さえ残ったままなのに、
どうしても、あの人しか────。
僕は壊れている。
どうしようもない程、
溺れてしまった。
だから────、
止めるんだ。
もう終わりにする。
全てを────。
僕は深く息を吐き、
一歩前に足を踏み出した。
朝の風が僕を包み込んで、
そのまま連れ去られていく
感覚────。
とても心地いい。
どうか────
神様がいるのなら、
お願いします。
この魂を深い海に沈めて下さい。
どうか────
静かに眠らせて下さい。
そして────、
願わくば、あの人が、
僕の為に一粒でも
涙を零してくれたら、
僕はそれだけで、
救われます。
どうか────最後に
この想いが届きますように。
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