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第44話

   『―― 今から実家へ行って、     家族にお前との事を     全て話すつもりだ』   昼食後、食休みがてらPCメールのチェックを   していた時、柊二からそんな携帯メールを受信し、   俺は慌ててコールバックした。 「もしもし、柊二?   お願いだから早まらないでっ」 『早まるなってのは、何だよ~。オレとしちゃあコレは  ちゃんと計画してた事だ』 「でも、抜き打ちみたいなやり方は酷いよ。  俺にも事前に相談くらいはして欲しかった」 『相談したら、お前は今みたく大騒ぎして止めたろ?』 「!!……」 『心配すんな。多分、夜には朗報を届けてやるよ。  待ってろ』   通話が切られても、動けなかった。   柊二の試みは絶対失敗する。   だって、匡煌さんは何が何でも柊二を神宮寺の   お嬢様と  結婚させる気だもん。   ご両親だって我が子が男なんかに入れ上げるのを   許すハズがない。   それにあの神宮寺氏自身も、そんな事を知れば   黙ってはいないだろう。   自分が身を引けば、全ては丸く収まる。   もしかしたら、   事態はそんな簡単な問題じゃないのかも   知れないけど、俺がこのまま柊二についていれば   彼はますます暴走する。   とりあえず、柊二の元から離れなきゃ。   NYへ出発するまでの寝床を確保する為、   久しぶりにあつしへ連絡をとろうとした時、   また、柊二から着信が入った。   彼の声は暗く沈んでいた。 『……ごめん倫、今夜は帰れない』 「……話したの?」 『……大喧嘩になったよ。ま、元々素直に認めて  もらえるとは思っちゃいなかったが、ハードルは  かなり高い……でもどんなに時間がかかろうと  説得するつもりだ。待ってて欲しい』 「……」 『……待ってて、くれるか?』   彼の縋ってくるような声に、涙がこみ上げる。 「……OK。待ってるから、早く帰って?」 『愛してる、倫』   俺はそのままトイレへ逃げ込んで、泣いた。   柊二……今の俺にあなたの全てを受け止められる   度量はありません。     洗面台で顔を洗い、   鏡に映った自分に向かって言う、 「しっかりしろ、倫太朗」   俺はあつしに連絡する前に各務製薬本社へ   電話をかけた。 『はい、株式会社各務製薬でございます』 「各務社長にお取り次ぎ願えますか」 『恐れ入りますがどういったご用件でしょう?』 「桐沢とお伝え頂ければお分かりになると思います」    『少々お待ち下さい』と機械的な返答の後、    保留音が流れてきた。    待つこと数分 ―― 『お待たせ致しました、私各務の秘書をしております  高田と申します』 「桐沢と言います。突然で申し訳ございませんが、  今日各務社長はお時間おありでしょうか?」 『あいにく本日はスケジュールが詰まっておりますが、  明日の午後3時にこちらへお越し頂くお約束でも  宜しいでしょうか?』 「はい、結構です。では、明日の午後3時に」   電話を切って、大きく息を吐いた。      これでいいんだ、もう、後戻りは出来ない……。

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