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第165話
ライトの家の下に着くと話し声が聞こえた
「くっくっく……」
「………何、笑ってんだよ!」
「可愛いな……と思って」
「だから、男に可愛いとか言うな!」
「涙目も可愛い」
階段を登りながら、拓海の声だと気が付く
「拓海、お前なぁ!」
「すげー赤いよ。ライト…………」
「赤くない!」
「嘘だー。ちょっと、顔見せて?」
腕を掴まれて慌ててライトは振り払っていた
「は、は、離せよ!」
「怯えるなって。くくっ」
仲の良さそうな二人に苛ついてしまう
「ずいぶん楽しそうだな」
思った以上に不機嫌そうな声を出してしまい
ライトが驚いてる
だけどイライラは収まらず、二人に近付いた
面白くない
…………腹が立つ
さっきの反省や決意は一瞬でどこかへ
行ってしまう
「ど、どうしたんだよ。吹雪」
「よぅ!吹雪」
なんで、こんなにイライラするんだ
「…………入るぞ」
俺は二人の間をすり抜けて、家に入った
「ライト。俺も上がってもいい?」
「え?あー。えーと……」
拓海、何しに来たんだよ
これじゃ……ライトに謝れない……
帰ればいいのに……
でも、ライトは追い返せないの、知ってる
「拓海も入れば?俺んちじゃねーけど」
「…………うん。入れよ。拓海」
とりあえず、先にキッチンに入り、
冷蔵庫にケーキを隠した
「ライト。コーヒーもらうぞ。
拓海は?コーヒーでいい?」
アイツ……本気でライトの事が好きなのか
わざわざ、家に来るなんて…………
「うん。どーも」
ライトの好きなミルクティー
砂糖は1本、クリームは2個
モヤモヤしながらかき混ぜた
お盆にミルクティーとコーヒーを乗せ、
リビングに運んだ
「ほら。ライト」
「ありがとう」
…………ライト、目が赤い
結構、泣いてたから……
「拓海。砂糖とミルクは?」
「どーも。ブラックで平気」
拓海はライトのカップをまじまじと見てる
「ライトのカフェオレ?」
「あ、違うよ。ミルクティー」
「ミルクティー!」
「コーヒー苦手で………」
ライトの事、好きな癖に、そんなことも
知らないのか
「吹雪。詳しいんだな…………
キッチンの場所も、ライトの好みも」
だから、なんだよ
文句あんのか
「あ、うん。よく来るから」
ライトが答える
「…………妬けるな」
…………なんだと?
「ぶっ!ゴホッゴホッ」
ライトは思わず、ミルクティーを
吹き出してしまった
「汚いよ。ライト」
笑いながら拓海がティッシュを渡す
「な、何を…………」
俺に隠すつもりは無いってわけか
「こんなに仲いいんだし、
どうせ、すぐバレるだろ?
吹雪。俺、ライトが好きで告白したんだ」
拓海が真っ直ぐ、俺を見てきた
…………牽制でもしてるつもりかよ
「…………そう」
素っ気なく答える
「あんまり、驚かないね。吹雪。
男同士、引かない?」
見てたから知ってる
…………さっき、驚いた
今だに信じられない
「俺には、関係ないから」
『俺には関係ない』
吐き捨てるように言った
一瞬、ライトの顔が曇る
キツイ言い方する必要なかったか……
なんか、拓海に腹が立って
関係は……ないけど……
…………まずい
なんか……ライト、落ち込んでる……?
今、キツく言い過ぎたからか?
それとも……
トイレの乱暴を思い出して?
なんとなく、気まずくて席を立つ
そして、行きたくもないトイレに行った
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