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第190話
ライトの寝息がくすぐったい
家までの距離
少し遠かったけど、歩いて帰った
重みと暖かさを感じてホッとする
こうやって、お前を連れて帰るのは、
…………ずっと俺でありたい
いつまで、こうしていられるんだろう…………
「吹雪」
起きたのか
「うん……」
返事がない……
…………寝言かよ
「吹雪……行かないで…………」
なんの夢、見てんだよ
「…………やだ……吹雪…………」
泣いてる……?
ライトの涙が俺の肩を濡らす
前も夢見て俺の名前を呼んで泣いてたっけ
どれだけ酷いんだ
夢の中の俺
いつも優しくないから……か……
手を握るとライトがムクッと起きた
「おろして。吹雪」
今度は起きたのか?
降ろすとライトが手を握って俺を見上げた
赤い顔して泣いてる
「吹雪……なんで……そんな事、言うの……」
「…………え」
……夢と勘違いしてる?
ライトは心配になる位、泣いてた
通りすがりの人がチラチラ見てる
「セフレ、やめないで…………」
その瞬間、周りがザワッとなる
男同士
セフレって単語
しかも片方、大泣き
そうなるよな……
っていうか!なんで、そうなった
「俺、やだよぅ……」
ライトは小さい子みたいにボロボロ泣いて、
一生懸命、目を擦ってた
「ライト……」
…………とりあえず移動してもいいか?
慰めてやりたいけど、
周りの視線に耐えられない
「ふ、ぶき……行かないで…………」
ライトの目からとめどなく涙が流れる
肩を震わせ、手を握るライトに
キュンとしてしまう
「俺、がんばるから……」
それを聞いたら、なんだか堪らなくなって、
ライトを抱きしめた
お前が頑張ることなんてない
そのままでいいよ……
男同士で抱き合った俺達を皆、見てた
立ち止まってる人、指差してる人までいる
周りの視線に耐えられず、下を向く
…………顔、上げらんない
願わくば、知り合いがいませんように……
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