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第56話

「………………拓海」 なんだ。拓海か………… ……なんだ、は失礼か 「ライト。今日はどうしたの?」 「へ?」 「駅にはいたのに、大学来てなかったから」 「あぁ………」 なんて言おうか 「俺のせい?」 「え?」 「俺がキスしたから…………」 そういえば、キスされたっけ…… 吹雪の事で落ち込んでて、拓海の事まで、 気が回らなかった 「…………えっと」 「とりあえず、部屋に入れてくれない?」 「………………」 この場合、どうすれば? 告白されて、キスしてきた相手を、 家に入れるのは、いかがなものか? でも、わざわざ心配して来てくれた友人を、 玄関キック(部屋に入れない)とか………… グルグル考えてたら拓海が笑った 「ははっ。ライトらしいな」 「…………何がだよ」 「お前のそういうとこも、好きだよ」 「だから、何が!?」 「貞淑なとこ?」 「貞淑って…………」 拓海は俺をなんだと思ってんだ 「ライト。目、赤い…………泣いたの?」 「…………」 そう言われて急に思い出した 吹雪の言葉 冷めた目 ジワッと涙がにじむ 「ライト……」 いけない! 今日は涙腺がおかしい! 人前で泣くとか……… 慌てて拭った 「ごめん。ライト」 「いや。別にお前のせいじゃない」 「…………嫌じゃなかった?」 …………!? それとこれは話が別!! 「俺は………………わぁっ!」 拓海が距離を詰めてきてビックリして、 大声を出してしまった 「くっくっく……」 「……何、笑ってんだよ!」 「可愛いな……と思って」 「だから、男に可愛いとか言うな!」 「涙目も可愛い」 うっとりした目で見られて引いてしまう まずい。コイツ、病気だ 「拓海、お前なぁ!」 「すげー赤いよ。ライト…………」 「赤くない!」 「嘘だー。ちょっと、顔見せて?」 腕を掴まれて、慌てて振り払う 「は、は、離せよ!」 「怯えるなって。くくっ」 その時だった 「ずいぶん楽しそうだな」 不機嫌そうな声に振り返る …………………吹雪!!

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