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第85話

「俺も今からバイトだから、 そろそろ帰るな」 「うん……」 俺達はただのセフレだから………… 「吹雪」 「何?」 「…………いや」 『ルイトのところに行かないで』 喉まで出かかった言葉を飲み込んだ 「じゃあ、またな」 「うん…………」 バタン 閉まった扉 ただ見つめて、小さく呟いた 「…………行かないで」 言えないのは俺のズルさと弱さだった バイト行く前、駅の近く 笑い合う吹雪とルイトの二人を見かけた あまりに自然な笑顔 声はかけなかった 他人みたいに通り過ぎて、バイト先へ向かう バイトをしながら、ぼんやり考えた ルイト…… 先生と仲直り出来なかったって言ってたな もし、吹雪の優しさに気が付いたら…… 俺……何考えてんだ………… ルイトが一途に先生をずっと思ってたの、 知ってるだろ 「ごめーん!風中くん。レジ入って!」 「ハイ」 「お待たせ致しました。いらっしゃいませ」 …………バイト、忙しくて良かった 今日はなんか考えちゃ、 ダメな気がする………… バイトが終わって、 どこにも寄らず家に戻った 明かりついてない ルイトはまだ帰ってないのか 今も吹雪と一緒に……? あの時、吹雪、優しい顔をしてた 二人を思い出したら、胸がズキズキ傷む 鍵を探して、下を向いてたら、 涙が溢れてきた …………涙腺がおかしい ゴシゴシ拭って、ため息をこぼす 吹雪とルイトがただ二人で 楽しそうに笑ってた たったそれだけ こんな事で泣くとか、どうかしてる いや。ずっと、心に引っかかってた …………限界がきてる 涙がこぼれ落ちた カギも見つからない…… 「…………ルイト!」 心配そうな吹雪の声 この日、初めてルイトと間違われた 今まで一度も…… 間違えられたことなかったのに なんで、今日………… ……もう無理…………! 「俺……ルイトじゃないよ」 小さい声しか出なかった 「あ……ライト……?ごめん………」 「今日は風邪気味だから出来ない。 悪いけど……帰って……」 振り向かずに伝えて、家の中に入った だって…… こんな顔、見られたくない 涙でボロボロに濡れた酷い顔 目頭が熱くなり、涙がとめどなく流れた 口を押さえて堪える 「…………う……っ…………」 覚悟を決める時が来たのかもしれない そろそろ終わりが近い ただ悲しくて…… 止まらない涙が床を濡らした

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