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第86話
ピーンポーン
インタホンが鳴った
「…………開けて」
吹雪が追いかけてきた
…………泣いてたの、バレたかな
無理だよ。吹雪
今は会えない……
上手い言い訳も思いつかないんだ……
「ライト」
玄関越しに話しかけられる
「……今日……は……帰って…………」
「ライト。頼むから開けて」
開けてどうするの…………?
頭がゴチャゴチャして、何も考えられない
ルイトの代わりなんて、嫌だ……………!!
「帰れよ……」
「とりあえず、中に入れてくれ」
もう嫌なんだ…………
俺達は一卵性双生児だから、
今まで、たくさんの人に何度も間違われた
だけど、吹雪……
お前にだけは間違えられたくなかった……
「あれ?吹雪?」
……………ルイトの声!
なんてタイミング!!
「…………ルイト」
「なんでいるの?」
「ライトと、ちょっと、話したくて………」
「ふーん。じゃ、上がれよ。
あ、今日は、本当にありがとうな!」
ガチャガチャと鍵を開ける音がする
慌ててバタバタと自分の部屋に逃げ、
布団を頭からかぶった
「ライトー?
…………なんだよ。吹雪。
ライトと喧嘩でもしたの?」
「いや……」
「うちの兄ちゃん、虐めないでね?
ちゃんと仲直りしろよ。ライト!」
陽気なルイトの声がする
「入るぞ」
返事を待たず、吹雪が部屋に入ってきた
なんで、この部屋には鍵がないんだ
バタン
扉の閉まる音がする
「どうしたんだよ」
「…………」
「何かあった?」
「……………別に」
優しい声
「……さっきは……その……ごめん……
遠目だったけど、泣いてるみたいに見えて、
お前が外で泣くなんて、思いもしなくて、
ルイトだと思ったんだ」
そうだったのか
確かに俺は外では泣かないけど…………
でも、どんな理由でも……
やっぱり……
間違えられたのはショックだったよ……
「お前が外で泣くなんて」
…………そうでもないよ
最近はお前の事、
考えるだけで泣けてくるんだ
「…………最近、吹雪といると、
先生を思い出して辛いんだ…………」
もっともらしい嘘をつく
布団に潜ったまま話した
「……………そうかよ」
平気で嘘ばっかりついて、
嘘に嘘を重ねて、本当の気持ちは何一つ、
話さなかった
パッと布団をめくられる
肩を掴んで乱暴に向きを変えられ、
あごをグッと上げられた
え………………?
ふと唇に温かいものが触れ、
キスされていることに気付く
なんで……………
考える間もなく、舌が入ってきて、
両手を押さえられ、俺の自由を奪う
吹雪は素早くスボンをおろし、
下着の中に手を入れてきた
「……ちょ……ちょっと!
……な、何してんだよ!」
「………」
「吹雪ってば!あ……アァッ……」
「触っただけで、
完勃ちさせてんじゃねーよ」
「……や……ダメ!
……ルイトいるんだぞ……」
「お前が声出さなきゃいいだろ」
そんな……
鍵もかからないんだぞ!?
ルイトが扉を開けたら…………
声を聞かれたら…………
「ライト。口開けて」
信じられなくて、意味も分からなくて、
ただ口を開いた
「…………んっ………ふ……はぁっ…………」
「ライト…………」
やめさせなきゃ…………
ルイトに気付かれたら、
傷つくのは俺じゃなくてお前だろ?
「……っ……!……ぅ、ん……
や……ダメっ……!」
「…………もっと、だろ?ライト」
「あ、アッ!あぁ…………」
どうしよう…………
優しくて甘いキスに、
吹雪のやらしい手つきに、
まともな判断力を失う
吹雪の背中に手を回したら目が合って、
心臓がうるさく鳴った
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