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「やっぱり厚かましい目障りな玩具 だ」
物騒な台詞に反し、ベンチに座り続ける阿羅々木の隣に繭亡はゆったり優雅に腰かけた。
太陽は地平線に呑み干されて庭園には橙の明かりが点々と灯っていた。
「あんなものに執着している隹川には幻滅する」
様々な異性を主にベッドで共有してきた。
互いに恋人だっていた。
感情移入は恐ろしく浅く、どれも大して長続きしなかった。
心は誰のものでもなかった隹川。
自分のものにもならなかった幼馴染み。
手に入らないのならこの先ずっと誰にも囚われなければいい。
隹川に傾倒している繭亡にとって、明らかに特別な存在として構われている式部は煩わしくて堪らない障害物に等しかった。
「お前の嗜好も理解できない、阿羅々木」
矛先が回ってきた阿羅々木はそれまで閉じていた口を開く。
「俺は式部が不憫でならない」
繭亡は憫笑 した。
暗闇に同化しそうな黒ずくめの幼馴染みにもたれかかり、黒々とした睫毛を伏せて「俺はお前が不憫でならない」と愉しげに罵った。
式部が隹川に無理やり連れ込まれた先はいつぞやのシンプルなラブホだった。
「えっ? 隹川っ、服っ、服は……!?」
その次に連れ込まれた先はバスルームだった。
制服を脱ぐ間も惜しんだ隹川は、なんと、全ての着衣もそのままにシャワー全開。
おかげで式部は頭からずぶ濡れ被害の巻き添えに。
「んぷぷっっ」
破天荒な振舞にぱにくる暇も許されなかった。
大理石調のタイル壁にまたしても磔にされて防御に疎い唇を根こそぎ奪われた。
不遜な舌に口内を占領される。
卑猥な水音をわざとらしく立てて激しく掻き回された。
「んんんっ……んぷっ……んっ……」
重なり合う唇の隙間からシャワーの温水が入り込んで唾液と共に下顎へふんだんに流れ落ちていく。
息継ぎの難しいキスに式部は顔をまっかっかにした。
湿り渡っていく深緑のブレザーをぎゅっと掴んだ。
「っ……っ……息できなぃっ……こんなの、しんじゃぅ、隹川……」
「そのまま死んじまえ」
「!!」
悪魔としか思えない発言に式部が素直に衝撃を受ければ隹川は吹き出した。
「可愛いやつ」
「……隹川、ちゃんと嘘だって言ってくれ……」
びしょびしょになった靴下が張りついて気持ち悪い。
濡れた髪が額や頬にくっついて、意外と長い睫毛まで重たげに湿った、見慣れないずぶ濡れの隹川が。
凄まじく、ひどく、かっこいい……。
「こんな至近距離から見惚れてんのか」
「っ……見惚れてない」
「うそつけ」
「う、わ、ぁっ!?」
水気を含んで重たくなった制服ズボンをぱんつ諸共ずり下ろされて式部の脳天は沸騰しそうになった。
滑らかな小尻をむにゅっと掴まれて。
痕がつきそうなくらい揉みしだかれて。
堪らず体を後ろへ逃がそうとすれば有無を言わさず引き戻されて密着を余儀なくされた。
「や……っ」
膝頭で直に股間をグリグリされて咄嗟に俯けば瞬時に顎クイされて獰猛なキスの餌食に。
息ができなくて胸を叩けば両手をすぐさま壁に縫い止められて。
式部のなけなしの抵抗を隹川は一つずつ的確に封じ込めた。
それはそれは悦に入った肉食ケダモノ面で。
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