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午後四時前、学校が終わって友達の宇野原・北と別れた後に式部は拉致された。 「隹川くんと仲良しのオトモダチだよね?」 危なっかしげな運転で歩道に横付けされた新型のミニバン。 ネクタイをきちんと締め、胸元にエンブレムのついた学校指定のセーター上にダッフルコートを着込んでいた式部は、回答する前に車内へ引き摺り込まれた。 「オレらも隹川くんの友達なんだ」 自分を捕らえた後部座席の二人に挟み込まれる。 話しかけてきたのは助手席に座る青年だった。 「騒いだり暴れたりしたらコレでお仕置きするから大人しくしててね?」 助手席の青年が折り畳み式のナイフをちらつかせ、隣の男に口を塞がれていた式部は切れ長な目を見開かせた。 一年ほど前、助手席の青年の恋人だった女子大生と隹川は一夜限りのベッドインに興じた。 家の門限を破るほどでもない暇潰しに過ぎなかった。 しかし男子高校生に恋人を寝取られたと人伝に知った大学生の青年は面目丸潰れとなり、それ以来、隹川を目の敵にしていた。 おかげで、去年のハロウィン、よく遊びにいくナイトクラブで隹川が変わった同行者を連れているのに彼はすぐに気がついた。 堂々とキスをしてみせ、その直後に同行者が逃げ出すと、隹川はその後を追いかけていった。 復讐の糸口を手繰り寄せた彼はかつてない昂揚感を抱いた。 復讐の本番に至ったときはどれほどの興奮を得られるのか、考えただけで武者震いし、計画を練り上げるのに夢中になった。 当の恋人とはとっくに別れていたが。 隹川への復讐心だけは未練たらしく燃え続けていた。 正しく、復讐は蜜の味、だった。 「今日は着てないけど、あの白ブレザーって目立つんだよね、どす黒い群れの中にいればいるほど?」 ……隹川の友達? ……友達がどうして僕にこんなことするんだ? 「パーティーしようと思ってさ」 タバコやお酒の匂いで酔いそうだ。 大音量の音楽が頭にガンガン響くし。 ずっと口も塞がれていて息苦しい……。 「ああ、窒息しちゃあ可哀想か。ほら、手。離してやんなよ」 青年と同じ大学サークルに所属する仲間が口元から手を退かし、咳き込んだ式部は、膝にポンと投げて寄越されたソレにギクリとした。 「ソレは保険です」 手錠だった。 「隹川くんを招待するために必要なオトモダチが勝手なことしないためのね」 ……この人達、絶対に隹川の友達じゃない……。

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