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視界に飛び込んできたのはキングサイズの特大ベッドだった。 「すごい……部屋の半分を占領してる……」 上階フロアの角に位置していた部屋。 玄関は奥行があり、タイルが敷き詰められたL字型の細い通路を進んでいけば、思う存分ゆったりできそうなキングベッドに出迎えられた。 壁際にはワイドソファ、小さな丸テーブル、ベッドの足元にテレビが設置されている。 閉じられたカーテンをそっと開くと、いつにもまして煌めく聖夜の街並みが眼下に広がった。 「式部、コートを貸せ」 式部はダッフルコートをあたふた脱ぐ。 手洗い・うがいを早々と済ませてきた隹川にマフラーと共に預けた。 「このホテル、高かっただろう?」 「さぁな」 「僕も払う」 「後でな」 いとおしい昂揚感で胸がいっぱいになっていた式部は、釈然とせずにちょっとだけ唇を尖らせる。 隹川、いつもそう言ってスルーして受け取ろうとしない。 今回こそ隙を見て服のポケットにお金を捻じ込んでおこう……。 「うわ……」 清潔感ある水回りはバスルーム、トイレがそれぞれ独立していた。 広くとられた洗面台には大きな鏡が取りつけられており、鏡を見るのが得意じゃない式部は伏し目がちに手洗い・うがいを済ませた。 棚に並ぶブランド物のアメニティにも目を向けずに洗面所を後にする。 「……隹川……」 トートバッグの中身をベッドの中央に広げ、靴を履いたまま羽毛布団上に寝そべっている隹川に呆れ返った。 「靴くらい脱げばいいのに」 「フットスローにどういう役割があるのか知ってるか、式部」 「土足で横になったときの汚れ防止……」 暖房と加湿空気清浄機がフル稼働中の部屋。 ダークブルーのクルーネックニットを腕捲りした隹川は、猫の関心でも引くみたいに舌を鳴らして式部を呼んだ。 「Here kitty, kitty(仔猫ちゃん、こっちおいで).」 「キティ……? 野良の仔猫じゃないんだぞ……」

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