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些細な愛撫に絡めとられかけた理性を寸でのところで取り戻し、緩慢な動作でベッドから抜け出した。
ソファに置いていた自分のバッグから丁寧にラッピングされた箱を手に取ると、胸に抱いて、俯き気味にベッドへ戻る。
「はい、隹川、メリークリスマス」
隹川はのそりと身を起こした。
片膝を緩く立てて差し出されたプレゼントを受け取る。
「ありがとう、式部」
これまでのものとは一線を画した隹川への贈り物。
仄かな緊張感に鼓動を加速させ、隹川が深紅のリボンを解くのを見守っていた式部であったが、ふとその切れ長な目が大きく揺らいだ。
あんまりにも丁重な手つきで隹川が包装を開いていくものだから。
不可思議な感覚に陥ったというか。
ゆっくりはだけられていくプレゼントに同調して、まるで、自分もそうされているような……。
……どうかしてる……。
直視できなくなり、また可能な限り顔を背けていたら「手袋か」と声が聞こえ、式部は気になっていた恋人の反応を横目で窺ってみた。
深みあるカーキ色の革手袋。
手の甲側には格子状の編み込みが施されていて、裏地にはカシミヤ、重厚な光沢と肌触りのいい質感に富んでいた。
じっと見つめるだけで感想を口にしない隹川に式部は不安げに顔を曇らせる。
「ごめん、隹川の趣味に合わなかったかな」
「いいや、まさか」
「本当に……?」
「相当、高かっただろ」
男子高校生にとって高くなかったと言えば大嘘になる。
「去年のプレゼントからえらく飛躍したな」
「……クリスマスプレゼントにスノードームなんかあげて、面白味も意外性もなくて悪かったな」
「季節問わず向こうの部屋に飾ってる」
「……」
「視界に入る度にお前のことを思い出してる」
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