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隙間なく重ね合わせて柔らかな微熱を共有する。 数秒後には物足りなくなって、閉ざされていた入り口を抉じ開け、温もる口内へと突き進んだ。 「ん……」 隹川は震える目蓋に見惚れながら舌を動かした。 未だに奥手で消極的な式部の舌を誘い出し、擦り寄り、深淵にも似た愛情を滴らせて戯れる。 「ん、ん、ん……」 溺れてしまいそうなキス。 式部は眉根を寄せて呻吟した。 隹川に緩々と甘噛みされた下唇が、擽られた舌先が従順に疼き出す。 唇奥で生じる水音に鼓膜までもが敏感にさせられる。 後頭部と背中に両手をあてがわれたかと思うとベッドに押し倒され、その間も濃密なキスを続けられて、式部は薄目がちに隹川を見上げた。 ……あ。 ……隹川への想いが溢れてきそうだ。 帰国してきた恋人と再会して別れる度に想いを募らせてきた式部は、口づけに耽る隹川と目が合って、心臓を痺れさせる。 済し崩しに何もかも奪ってほしくなった。 しかし。 背中に当たるその感触に、はたと我に返った。 「す、隹川、待って、ストップ……! プレゼントを踏み潰してる……!」 ベッドには様々なプレゼントが並べられていた、キングサイズとはいえ一つや二つ、背中の下敷きになるのも当然だろう。 「俺は気にしない」 「僕は気にする! せっかくのプレゼントなのにっ……君からの……」 必死になって肩を掴んで抵抗してきた式部に、隹川は、わざとらしく長いため息をついた。 「仕方ねぇな」 のそりと起き上がり、自分が贈ったプレゼントを両腕で一気に掻き集め、ソファへと運ぶ。 式部からもらったプレゼントは別格とでも言うように丸テーブルの上へ、包み紙やリボンと一緒に置こうとして、ふと目の高さまで持ち上げた。 「あ」 イブの夜、式部が初めてバイトをして贈ってくれたクリスマスプレゼントにも隹川はキスをした。

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