90 / 95

11-13

「興奮しない、全然しない、ちっともしない」 「バスローブ、よく似合ってるな、そそられる」 「歯磨きくらい落ち着いてさせてくれ!」 最早、歯磨きどころではない。 両腕の輪に捕らわれた式部が前のめりになり、うがい用のコップを取ろうとしたら、隹川に先にひょいっと取り上げられた。 「ほら、ちゃんとブクブクしろ」 「……僕は園児じゃないんだが」 「ほら」 「うう……」 水の入ったコップを口元に押し当てられ、式部は仕方なく口に含んだ。 正方形の真白な洗面ボウルの中央にミントの泡を吐き出す。 「す、隹川……」 猛獣じみた舌遣いで首筋の痕を舐め上げられた瞬間、蜜の味のする戦慄に背筋を犯された。 「ま……待って……」 隙だらけであるバスローブの合わせ目から胸元へ片手が滑り込んでくると、おずおずと尋ねた。 「本当に……ここで……するのか?」 隹川は答えない。 自分がつけたばかりの痕をしつこく丁寧に(ねぶ)りながら平らな胸を揉みしだいた。 もう片方の手もバスローブの内側へ。 正面から火照る太腿の間へ滑り込ませた。 「は、ぅ……」 散々抉じ開けられて敏感になっていた後孔を指腹でなぞる。 式部の片方の肩から滑り落ちたバスローブ。 ライトが点灯する鏡に慎ましげに色づく胸の突起が曝された。 「あ、ん」 長く太い指でキュッとつねられて式部は嬌声を洩らす。 「ん、く」 ツプリとナカに突き入れられた中指。 みるみる第二関節まで呑み込まされ、腹側を小刻みに引っ掻かれて、堪らず腰を反らした。 「……あ……」 やがて内腿をとろとろと流れていった恋人の残滓。 「いや……だ……」 「こんなにたくさん受け止めてくれて感謝しかない」 「……隹川の、ばか……っん……ン……っ……ふ……」 「……今のお前の口の中、ミント味だ」 自分にもたれてきた式部にキスをし、あっという間に上下の唇ともしとどに濡らしてから隹川は囁いた。 「俺のこともっと受け止めてくれるか」 人差し指を追加し、仮膣内で不揃いに蠢かせ、普段は禁域に該当する式部の股座をさらに卑猥に穢す。 「ここに、俺の、夜通し、ずっと」 クチュクチュと音を立てて密壺を掻き回され、ツンと芽吹いた乳首を優しく蹂躙されて、式部は身じろぎした。 「ッ……」 鏡の中の自分と目が合って否応なしに正気に戻った。 「やっぱり嫌だ、ここでは……」 「……」 「あ……お風呂のお湯……止めないと……隹川、離して……」 背後から羽交い締めにするように式部を抱いていた隹川は、逃げたそうにしている体を解放してやる素振りを見せた。 「えっ?」 見せかけただけ、だった。 軽々と抱き上げて黒御影の洗面台カウンターに座らせると、すぐさま両足の間に割って入り、驚いている式部に鋭く笑んでみせた。 「本当に嫌なら死ぬ気で俺から逃げてみろ」 ……逃げられるわけがない。 ……隹川のどすけべめ。

ともだちにシェアしよう!