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「もう兄貴なんか知らないッ」 罰が悪そうに男二人が去り、何故か弟もダッシュで去り、雑然とした街角で隹川は少女と向かい合った。 「……ありがとう」 大人しめな、清楚系の、リップクリームしかつけていなさそうなスッピン顔。 これまで隹川が関係を持ってきたどの恋人ともまるで違うタイプだ。 「目に入ったから何となくな」 傍目には素行が良さそうに見えない、弟に先月染め変えられたばかりの髪、ピアスあり、着崩した制服姿、身長180前半。 ぶっちゃけ少女に言い寄っていた男二人よりも隹川の方がガラが悪かった。 そんな男子高校生をモロ華奢な少女は真っ直ぐに見上げて言うのだ。 「よかったら、お礼がしたい」 「お礼? ふーん、じゃ、お言葉に甘えて」 「え、え、え、ちょ、行っちゃうよ、式部連れてかれちゃうよ!?」 「今の、何か自分から誘ってなかったか?」 「え、え、式部、根が真面目だから、助けてくれたおっかなさそ~なあの人にお礼でもするつもりかな!?」 「あり得るな」 「え、わ、ちょ、あの人歩いてるだけなのに足早過ぎ! 見失っちゃうよ!」 携帯ショップの看板影から成り行きを見守っていた男子二人は慌てて友達の後を追おうとしたが、すでに手遅れだった。 隹川に腕をとられた少女は人ごみに紛れて、その場から消えていた……。

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