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「お前、中学生か?」
「うん。中二だ。君は……?」
「高三。お前、かわいーのに変わった話し方すんのな」
「……可愛い?」
客の入りが程々なファミレスで向かい合った隹川と少女の式部 。
「僕、可愛いのか……?」
熱々鉄板上でジュージュー肉汁をしぶかせるステーキをテンポよく食べながら隹川は頷いた。
「人並み以上にかわいいんじゃねぇの」
「ふぅん……」
海鮮グラタンをちびちび食べていた式部は特に照れるでもなく曖昧な表情で相槌を打つ。
ドリンクバーでウロウロしている女子高生らが隹川を遠目に「かっけぇ」「でも、あれ、ゆぃのん元彼じゃ?」なんて話をしていた。
ゆぃのん? 誰だそれ。前の前の前の女だったか?
それとも前の前の前の前の……わからねぇ、放置。
「これ食ったらどうする」
「え……?」
「解散?」
あっという間にステーキを完食した隹川はグラスの水を一気に飲み干すと、まだちびちびしている式部に尋ねた。
スローペースな両手を完全に止めて式部はぽつりと言う。
「もうちょっと一緒にいたい……駄目か?」
「俺のこと好きになったか」
「え」
「あの二人はダメで俺は可、そーいうことじゃねぇの」
「駄目……というか、可……というか」
正直なところ、これまで接したことのない人種である隹川に式部は興味を引かれていた。
しかしながら関わりのない人種であるのは最初の男二人にも言えたのだが。
「俺、お前みたいなタイプの奴、知らねぇ」
「……僕もだ」
互いに感応し合った二人。
であったが。
「ココ。そんな毒々しい雰囲気じゃねぇし。きれーめだから。初心者向け」
「ココ、は……あの……いわゆるラブホテル……か?」
「いわゆるラブホ、だな」
「ちょっと待ってくれ、隹川、あの……誤解しないでほしい」
「あ。そーいうことか。悪ぃ」
「あ……ううん、わかってくれたのなら……」
「見た目で初心者扱いしたけどほんとはそれなりに経験あるってことか」
「え? わっ、ちょっと待っ……隹川っ……僕、そんなつもりじゃ……!」
俺はそーいうつもり満々だ、式部。
お前を見つけた瞬間からな。
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