放課後。 呼び出された式部は指定されていたコンビニに到着した。 「よぉ。先週ぶり」 雑誌を立ち読みしていた隹川はためらいがちに近寄ってきた式部に気が付くと口元のみで笑った。 「今日はスカートじゃねぇの」 もう永遠に会うことなんてないと思っていた。 一日だけ、好き勝手に乱暴に弄ばれて、もうそれきり、オモチャのように放置されて、このまま時間が流れていくのかと思っていた。 オフホワイトのブレザーにネイビーの縁取り、そしてネクタイ、スカート……ではなく、チェック柄のズボンを履いた式部はきゅっと唇を噛んだ。 「じゃ、行くか」 重たそうな学生鞄を持つ式部の片腕をとると薄っぺらなスクバを提げた隹川は大股でコンビニを後にした。 どこへ行くのか、何の説明もしてくれないマイペースな隹川に問いかけようとした式部であったが。 「まっ、待て、待てーーー！」 聞き覚えのある声にびっくりして振り返れば。 「……宇野原？」 「式部をどこ連れてく気だ、このやろー！！」 「あーあ、俺、知らねーぞ」 友達である宇野原がコンビニ駐車場から全速力で駆け寄ってきた、その後を気乗りしない足取りで北がついてくる。 尾行されていたことにまるで気づいていなかった式部は呆然となり、その腕をとっていた隹川は関心なき男子中学生を冷めた眼差しで見下ろした。 「小せぇ」 「ま、まだ中学生だもん！」 やたら大声を連発する宇野原に一番恥ずかしい思いをしている北は「ださい、宇野原」と友達に素っ気ない一言を放つ。 「ださくてもいいし！　ほら、帰ろ、式部っ」 隹川に片腕を捕らわれている式部のもう片方の腕を宇野原は握り締めた。 「最近、式部がおかしかったの、そいつのせいだろっ？　先週もこんな風に式部のことどっかへ連れてった……っこんな奴についてく必要なんかないよ！」 通行人の視線を浴びて、自分の腕をそれぞれ握る相手を交互に見、式部は途方に暮れそうになる。 何だろう、これ。 どうしたらいいんだろう。 すると。 片方の手が不意に離れた。 隹川は何にも言わずに式部をその場に残して淀みない大股で歩き出した。 足が長い長身高校生はあっという間にコンビニから遠ざかっていく。 まだ明るい日差しに包まれている街並み。 街路樹の葉が日の光に穏やかに瞬いている。 横断歩道に差しかかって隹川は足を止めた。 すると。 急いた足音が聞こえてきたかと思うと背後でぴたりと止んだ。 僅かに息切れしている式部を肩越しにちらりと見下ろして隹川は言う。 「よぉ。さっきぶり」 「し、式部……行っちゃった……」 「お前といっしょいると恥ずかしくて嫌なんだろ」 「北ひどいっ！」