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「服着るより先に風呂入れよ」 「お風呂より先に服を着て電話しないと」 「裸で電話しろ」 「……いじめないで、隹川」 布団から出るに出られずモジモジしている式部に笑みを深めた隹川は。 「とりあえず俺の着てろ」 そう言うなり上体を起こすと速やかにシャツを脱ぎ、呆気にとられている式部に手荒に着せてやった。 「むぐ」 「おら、お前のスマホ。中身スカスカだな、容量もっと無駄遣いしろよ」 「……見たのか?」 「ロックかけてねぇお前が悪い」 勝手すぎる上半身裸の隹川に呆れつつ赤面する式部なのだった。 留守電は主に家から、そして宇野原からちらほら、北から一件だけあった。 <大丈夫!?式部大丈夫!?> 式部の母親から連絡があった宇野原はすぐさま式部に電話を寄越していた。 <おばさんには、ここんとこ式部疲れてたみたいで、あー海が見たいなーとか言ってて、ちょっとプチ家出に憧れてたみたいだから、明日には多分帰ってくるって、そう言っといたからな!ほんと大丈夫!?> <あー……宇野原から電話あって、もーアイツうるさい……式部、あの高校生といるんだろ? 夜遊び、別にいーんじゃ? 息抜きってことで、さ> 一先ず式部は授業中の二人にメールを送り、そして、深呼吸して自宅に電話した。 「うん……大丈夫、ごめんなさい、心配かけて……今日はちゃんと帰るから」 床に座り込んだ、自分のシャツがだぼだぼな中学生の後ろ姿を、ベッドに寝そべったままの隹川は面白そうに眺めていた。 隹川のお言葉に甘えて式部はお風呂を借りた。 とりあえず家族・友達に連絡を済ませて一安心した身に熱いシャワーは心地よくしみた。 しかし。 「……隹川」 「ご丁寧にネクタイまで締めてんのか、まさか今から学校行くつもりか?」 「……隹川は行かなくていいのか?」 「さぼる」 制服一式を身につけた式部はリビングのソファで寛いでいた隹川にモジ、モジ、歩み寄った。 「あの、隹川……ぱんつが見当たらなかった」 「洗濯した」 「えっ」 「今、乾かし中」 「そんな」 現在ノーパンである式部が呆然と立ち尽くしていたら、シャツにパーカーを羽織った隹川はすっと立ち上がり、モジモジしている中学生に言った。 「じゃ、今から飯行くか」

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