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「なにって。食後の一服」
隹川は呆れ返っている式部の隣に座った。
慣れた風にタバコをくゆらせると、長い指に挟み込み、真面目な優等生中学生の口元に掲げた。
「吸えば帰してやるよ」
「……ぱんつ、乾いたのか?」
「もう乾いてんだろ」
「……吸いたくない」
「じゃあ帰さねぇ」
また自分の口元に翳してスパスパし、懲りずに式部の元へ掲げる。
式部は首を左右に振った。
「吸えって」
「嫌だ」
「じゃあ犯す」
真顔でそんなことを口走る隹川。
頑としてタバコを受け入れない式部。
「これ以上困らせないで……隹川」
そう言われると逆に困らせたくなる性格の隹川は。
口内に紫煙を溜め込むと、グシャッ、テーブルに置いていた母親愛用の灰皿にタバコを押し潰して。
「んむっっ」
強引に式部にキスした。
嫌がる唇の奥目掛けて紫煙を直接ふかし込んだ。
当然、激しく咳き込んだ式部の肩に腕を回し、その耳元で意地悪に囁きかける。
「ノーパンで歩き回りやがって。ビッチみてぇ」
「ッ……げほ……ごほッ」
「吸わなかったから犯すの決定な」
耳たぶを舐め上げられて、まだ咳が止まらない式部は満遍なく涙ぐんだ双眸をブルリと震わせた。
「隹川……」
今度は首を左右に振らずに抵抗を弱め、本来の制服姿で内股になっている式部の、舐めて濡らしたばかりの柔らかな耳たぶを隹川は甘噛みした。
「一回シたら帰してやるよ」
学校でもないのにネクタイをきちんと締め、半開きのうるうるまなこで隹川を見つめ続ける式部は。
隹川が羽織ったパーカーを、きゅ、と握り締めた。
「隹川……女装してない僕と……キスした」
「……」
「ただの中学生の僕にキスした」
口内に無理矢理流し込まれた初めての苦味に眉根を寄せながらも式部はちょっと笑った。
そんな出来損ないの笑顔に隹川は身も心も囚われて……。
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