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「チンジャオロース定食に水餃子大盛り、式部、お前は?」 「あっ、えっと、これがいい」 「海老と卵の炒め定食か、そんだけか?」 「そんだけで、あっ、それだけでいい」 マンション近くに建つ飲食店、たまに出前も頼んでいるという最寄りの店で隹川と早めの晩ごはんを食べた。 「うまいし量も多めだからな、弟とよく来る」 小奇麗な店内のテーブル席には家族連れがいたり、カウンターにはお一人様の会社員が点々と座っていたりと程々に賑わっていた。 中学二年生にしては食の細い式部が大盛りごはんをもそもそ食べている向かい側で高校三年生の隹川はあっという間に食事を平らげた。 お父さんもお母さんも忙しくて、時々、こういうお店で弟の獅音さんとごはんを食べて。 ファミレスではステーキをぺろりと完食する。 タバコは、僕の前では吸わなくなったけど、ちゃんとやめてくれただろーか。 未成年の喫煙は禁じられてるし体によくない。 一人のときは家でどんな風に過ごしてるんだろう? 一人で食事するときはもっと早い? どんな夜を過ごしているんだろう。 二人分の夕食の支払を済ませ、レンタルショップで準新作ムービーを借り、夜風に縮こまる式部を連れて隹川は帰宅した。 「ほら」 ほんの少し砂糖で甘くしてホットミルクを淹れた。 「お前に似合いのお子様向け味つけ」 「お、お子様じゃない」 自分にはインスタントコーヒーを淹れ、ソファにちょこんと座った式部との間にシュークリーム入り紙袋を下ろして、DVD鑑賞。 「あんまり甘いモン食わねぇけど。甘過ぎなくてうまいな、コレ」 「生肉にしようか、どうしようか迷った」 「俺はライオンか」 「ここのお店、プリンもそんなに甘過ぎなくて。隹川も気に入ってくれるかと思って、買ってみた」 「へぇ」 映画はSFモノだった。 最新技術を駆使した映像よりも式部が気になったのは。 「もういっこ食うか」 真横でシュークリームをばくばく食べる隹川。 指についた残骸を大胆に舐め取る振舞に高まる肉食感。 豪快な食べっぷりにどうしても見惚れてしまう。 「相変わらず遅ぇな」 隣で一つ目のシュークリームをもそもそ不器用に食べていたら堂々と笑われた。

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