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持ってきたパジャマを着てリビングに戻ったらまたしても笑われた。
「小学生かよ」
「隹川がどうして笑ってるのかわからない」
「飽きねぇ奴」
ネイビーに白の縁取りパジャマでキョトンしている式部の頭を一撫でし、隹川も風呂へ向かった。
リビングに残された式部はソファにちょこんと座る。
つけっぱなしになっているテレビ、流れるニュース、片づけられたローテーブル。
関節照明のみ点されて部屋の隅や天井はうっすら暗い。
暖房が効いていて暖かく、時に周囲の住人の気配が伝わってくる。
クッションを抱いた式部は小さなため息をついた。
どこか夢の中じみたフワフワした感覚が頭の芯に付き纏って、ここにいることが現実ではないような、不思議な気持ちになる。
いっしょにごはんを食べ、映画を見て、シュークリームを食べた。
そんな些細な時間を過ごして胸に満ち溢れた幸福感。
「隹川」
特に意味もなくすぐそばにいる彼の名を呼んだ。
「隹川…………シたい…………」
いつもより遅めの就寝時間。
日付が変わったばかりで薄暗い隹川の寝室にふと零れ落ちた声。
七分シャツにスウェットで、暖かな羽毛布団の下で式部を背中から抱きしめていた隹川はうっすら目を開いた。
乾ききらずにしんなり湿った髪。
同じ香りがする。
耳元やうなじからも。
「もっとはっきり言え」
先程から腕の中で微かに震えていた華奢な体が一段と揺れた。
「ちゃんと言えよ、式部」
耳たぶ寸前で囁いてやれば「ッ」と小さな悲鳴まで喉奥に滲ませた。
冷えた夜に惜しみない温もりを与える抱擁に身を委ねていた式部は。
すぐ背後に迫る隹川の息遣いに心臓を溶かされそうになりながら、上擦った声で、おねだりした。
「隹川と……えっちなことがしたい……」
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