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7-「お前のこと見せびらかしたかったんだ、悪いかよ?」

隹川に無理やりキスされて式部は思わず………………。 「おい、式部」 数時間前、夕暮れ刻、図書館帰りだった式部は隹川に偶然出くわした。 「隹川……なのか?」 本日はハロウィンだった。 仮装した人々が行き来する街中で隹川もまた奇抜な格好をしており、背格好と声で何とか見分けがついた式部は眉根を寄せた。 色褪せて草臥れた感のあるカーキのミリタリーシャツ、ダメージデニム、ごつめの紐ブーツ。 極めつけなる血飛沫の飛んだホッケーマスクをずらして隹川は笑う。 「十三日の金曜日。わかるか?」 「よく知らない……似合い過ぎて怖い」 学校から図書館に直行し、ネイビーの縁取りがあるオフホワイトのブレザーにネクタイ、チェック柄のズボンを履いた式部には連れがいた。 「し、式部、やっぱこいつやばいよ!」 「高校生の迫力じゃないぞ、コレ」 友達の宇野原と北は殺人鬼コスプレを卒なく着こなした隹川に若干怯えていた。 一方、隹川にも連れがいた。 「兄貴のコスプレにいちゃもんつけてんじゃねぇぞ、ああ?」 過度なブラコン属性にある弟の獅音、こちらは緩めたネクタイに薄汚れたエプロン、継ぎ接ぎだらけのマスクをかぶっている、作品違いの殺人鬼コスプレがこれまたよく似合っていた。 他に三人、式部が初めてお目にかかる者達がいた。 「やだ、なにこのコ達、かわいい!」 羽飾りのついたベネチアンマスクにどぎついレッド系のカラコン、男子中学生には刺激が強い網タイ・ミニスカナースの出で立ちをしたスタイル抜群の少女。 「セラ、怯えてしまうからあまり興奮するな」 オペラ座の怪人を彷彿とさせる、顔半分を覆う白マスク、麗しく整った顔立ちで多くのコスプレ女子の視線を引きつけているイケメンファントム。 「……随分小さいな」 全身黒ずくめでカラスマスク、周囲と比べるとコスプレしているのかイマイチわかりづらい、長身長髪のカラス男。 「ねぇねぇ、このコ達って隹川の知り合いなの?」 「先頭の奴はな。俺専用のオモチャだ」 まるで知らない彼ら相手にオモチャだと説明され、後ろにいる友達にまで聞かれて、式部は……傷ついた。 「行こう、宇野原、北」 回れ右してその場から足早に去ろうとした式部を隹川は逃がさなかった。 「お前も来いよ、式部」 手首を掴まれ、憤慨して振り返れば血飛沫ホッケーマスク、見慣れないからついつい怯んでしまう。 「来いって、どこに……?」 「悪夢のマスカレード」 い、嫌な予感しかしない。 「お前らも式部のお供として来てやれ」 「ええええっ」 「腹へってるんで帰ります」 「私のお供にほしい!」 「おい、セラ。隹川、彼らは中学生じゃないのか」 「別にいいんじゃねぇの」 「私、式部がいい! お供にほしい!」 「ふざけてんじゃねぇ、セラ、このちっこいの二人でいいだろ」 「ちっこいの言うなぁ!!」 「宇野原、大声出すな、これ以上目立ちたくない」 自分の意思など綺麗に無視して勝手に未知なる場所へ行く流れにしてしまった隹川に、式部は、悲しくなった……。

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