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第9話

  ニューヨーク市(英: New York City)は、   アメリカ合衆国ニューヨーク州にある都市。   1790年以来、同国最大の都市であり、   市域人口は800万人を超え、   都市圏人口では定義にもよるが2000万人以上。   2015年の市内総生産は6625億ドルであり、   全米最大、東京に続き世界2位である。   ロンドンと並ぶ世界トップクラスの世界都市、   金融センターであり、世界の商業・文化・   ファッション・エンターテインメントなどに   多大な影響を及ぼしている。   (ウィキペディアより、引用)   世界屈指の多民族社会を象徴するよう   不夜城と比喩されるこの大都市には、   様々な人種が生息している。      世界を代表する歓楽街を幾つか抱くこの街は、   その名の通り24時間眠ることがない。   日本発信のアニメや日本食人気に便乗してか?   近年、ココ、マンハッタン区のミッドタウンには、   日本流の風俗店の進出が目覚ましい。   特にアメリカを始めとした代表的な先進国では、   男性や女性が同じテーブルについて酒の相手を   してくれる店は少ないので、日本から新規参入の   ホスト・クラブやキャバクラ、ハプニングバー等は   開店以来、大抵どの店も連日平均1時間から   1時間半待ちの大盛況が続いている。 『7番テーブル、ミス・テイラーより、  ドンペリ・ゴールド5本頂きましたーっ!』 「「「ありがとうございまぁーすっ!!」」」   売上の小計方法は大体日本のホスト・クラブと   同じで、お客1人の会計金を店とメインで接客に   あたったホストが 2対6の割り合いで分配し   残り2割りをヘルプで就いたホスト達で分ける。     例えば、上記の ”ミス・テイラー”の場合を   例に挙げると ――   ドンペリ・ゴールド1本約10万5千円   (約$982)を5本で10万5千円×5=   ¥52,5000(約$4,910)   これに、テーブルチャージ料・指名料・飲食代・   TAX・サービス料が加算され ――   どんなに安く見積もっても80枚以上の諭吉さんが   飛んで行く事になる。   なので、繁盛店のナンバーワンともなれば、   ひと月に平均1000万を稼ぐ猛者もいるのだ。   1人の男がマイクを持ち、   シャンパンの注文が入った事を、   店内全体を煽るように声を響かせると、   それに続くように派手な男達は一斉に   お決まりの台詞を口にし、   7番テーブルへと集まる。     ―― ここはホストクラブ    ”シャトー・プリンス”   店内は薄暗く、流行りのお洒落な音楽と   ブラックライトで演出された空間には、   きらびやかな若い女の子や、真面目そうなOL、   生活に疲れた風な主婦に年配の女性、   やり手のキャリアウーマンなど、   様々な層のお客様が愉しまれている。   今夜は一段と賑わっていた。   店内のBGMが定番のハイテンションな音楽に   変わると、7番テーブルのお客は期待と優越感で   胸を踊らせる。   ここで普通のホストクラブなら、シャンパンコール   と、なるのだが、お客の希望でコールはなし。     シャンパンをグラスに少量ずつ入れた物は   ホスト達が、グラスに適量入れられた物はお客が、   残ったシャンパンはボトルごと指名ホストが   各々持ち ――、 『それではミス・Taylor(テイラー)、  お誕生日おめでとう御座いますっ!!』 「「おめでとうございます!!」」   みんな一斉に飲み干す。   ボトルごと飲んでいる指名ホストが飲み干すと、   マイクパフォーマーがマイクを握り締めた。 『それではっ! 素敵な姫よりひと言頂きたいと  思いまーす!』   音楽が一時停止された中、   マイクを向けられたお客は、嬉しに叫ぶ。 『タクトサイコーッ!! そして、21歳のお誕生日  おめでとーっ!!』   お客が言い終えると音楽は再開して、   次は指名ホストへとマイクが向けられた。 『アリガトーッ、ミシェル。貴方はサイコーに  いかしたレディーだよ』   No.1ホスト・タクト テラシマの   “サイコーにいかした女”を   マイクパフォーマーに拾われて、   これから定番のラブダンスが始まる。   他のテーブルについている女性客らの羨望を   一身に熱め、この時間(とき)だけはNo.1を   独占出来るのだ。   優越感に酔いしれたお客は、   続けて高額なシャンパンを入れた。   今夜は”シャトー・プリンス” NO.1ホスト・   寺嶌 拓斗のバースデーイベント。   席は満席で、まだか・まだかと自分のテーブルに   タクトが来てくれるのを待っているお客で   溢れ返っている。   その中でも、ひと際目立つのがシャンパンタワーの   存在。   これは今夜の目玉だ。   シャンパンタワーを用意したお客は、   今夜のお客の中でも一番の太客。     ミス・テイラーとのダンスを終えたタクトは、   数分その席に留まった後、今夜の一番の見せ場、   シャンパンタワーのお客の席へと移動し、   お客の隣にピッタリと密着するように座って、   お客の耳に手を添えると吐息混じりに囁いた。 『シルビー、今日のドレスめっちゃ似合ってるよ。  思わず脱がしたくなるな……』   ”シルビー”と呼ばれたお客は、   タクトの甘い言葉に胸をときめかせ、   頬を赤らめる。 『じゃ、今夜のアフターは私で決まり?』   身に着けている洋服や装飾品からみて、   社会へ出ればそれなりの地位と仕事がある   キャリアウーマンなのだろうが、   タクトの傍では全てのしがらみを脱ぎ捨てた   ただの小母さんだ。 『ふふふ……さぁて、それはどうしよっかな~』   寺嶌 拓斗(てらじま たくと)は本日、   *月5日で満21才となった。   身長190㎝ちょい、体重110㎏、   鍛え抜かれた肉体に程好く付いた筋肉、   セットされた黒髪の毛は、   肩に付かないくらいの長さ。   程よく健康的に焼けた小麦色の肌で   綺麗な長い睫毛の二重な目。   鼻筋はスーっと綺麗に通っていて   少し厚めのぷるんとした唇。   完璧なルックスと完璧なゲストサービス。   それが今、ミッドタウン界隈で一番の集客率を   誇るホストクラブ”シャトー・プリンス”の   No.1ホスト 九条竜二だ。   自分の事を指名してくれるゲストに性の悦びと   快楽に溺れさせるのも、拓斗にとっては単なる   営業の一環だった。     積み上げられたシャンパンタワーの頂上から   1本10万円以上のシャンパンが次々と   注がれていく。   常識離れした高額な金額はたった一夜で   消費される。     そして拓斗は、この日、断トツで一番の売上を   誇ったシャンパンタワーのお客とアフターへ行く   約束をした。     いつもの倍以上お酒を飲んで酔っ払っい、   足元だっておぼつかないような状態だが、   そんな事は関係ない。   拓斗なりのこうした“アフターケア”が、   指名客を増やし、ひいては新たな太客の開拓へも   繋がる事なのだから。   きらびやかな世界で、大金を動かす摩天楼の若獅子   寺嶌 拓斗。   容姿もホストとしての素質も、   男としてのステータスも、   この世界では誰もが憧れる程の、   実力の持ち主なのだ。

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